【お話】金色の森と、花のお酒。
部屋で本を読んでいたはずなのに、気がついたら金色の森にいた。幻の花のお酒をひとくち、飲んだわ。
もらったステキコーデ♪:13
部屋で、本を読んでいたはずなの。
のんびり、物語の世界にひたっていたはずなのよ。
なのに、気がついたら、
見たこともない、金色の森の中。
きらきら、ちらちら、妖精たちが舞い踊る。
濃密に香る、幻想の花。
妖精の笑い声と、花の香りが、
わたしの心を、惑わせる。
まるで迷路に迷い込んだみたい。
道はちゃんと見えているのに、
それでも、心が迷っている。
行く先が、見えない。
もう、戻らなくてもよいでしょう? って言われて、
そんなわけないじゃないって、困ってしまった。
どうしようかと、悩んでいたら、
仲良しの青い小鳥さんが、こっちだ、こっちだと案内してくれたの。
それで、無事に戻ってこれたのよ。
小鳥さんには、お礼に、ホットケーキのかけらをあげたわ。リクエストされちゃったから。
そうして、何もかも、元通り。そのはずだったんだけど、
実はわたし、あの森から、ひとつだけ、持って帰ってしまったものがあるの。
ほんとはね、いけないのよ。
妖精の世界は、妖精の世界。森にあったものは、森にあるままに。
そうして、人間の世界に戻ってこなくちゃならなかったのに。
わたし、あの森で、
お酒をひとくち、飲んでしまったの。
花の香りと、蜜の味がして、
光と、きらめきの熱がこもっていた。
妖精たちが作っていたお酒らしいわ。
ほんのひとくちだったけれど、
今もその花の香りが、口の中に残っている気がする。
思い出すと、ぼーっとなっちゃうの。
知り合いの魔法使いに相談したら、
ああ、そりゃ、危なかったよって言われた。
生きた人間には、ひとくちで十分、
それ以上飲んでいたら、戻って来れなかっただろうって。
しばらく心がふわふわしてるけど、そのうちだんだん忘れていくから、
そうしたら日常に戻れるよ、ただ、
ぼーっとなっている間は、ちょっと存在感がなくなって、影みたいになってるかもしれないけどね、って言われた。
ちょっと、それ、困るわ。
結局、あのお酒ってなんだったのっ、て尋ねたら、
あれは夢と光を集めたもの、
語られる物語の本質につながるもの、
昔の詩人たちが飲んだ、霊感のようなもの。だって。
そのせいかしら?
なんだか最近、やたらとポエムを作りたくなるんだけど!
***
妖精の差し出すお酒は、どうかすると、人には毒になる。
純粋な光ほど、人には危険。というお話。
あちらは害意はなぐて、好意から差し出していたりするんだけれども。