小説『その雪と血を』
ジョー・ネスボ 著
『その雪と血を』を読みました。
たまにはさらっと読めそうな
ミステリーかサスペンスを
読んでみたいと思い立って
ネットでいろいろ検索してみたところ
翻訳ミステリー大賞受賞作で
ページ数も少なめの
本書を見つけました。
オスロの麻薬密売組織に雇われている
殺し屋の男性が
組織のボスに自身の妻の殺害を
依頼されるという話で。
主人公の視点による
クールな語り口で物語は進んでいき
ボスの依頼に戸惑いつつ
仕事を遂行しようとするも
標的である妻に惚れてしまい
更に主人公の早とちりによって
妻とともに
組織から逃走する羽目になるという顛末に
「う~ん、ありがちな展開…」と
ひとりごちたのだけれど
ミステリーと謳うだけあって
後半で予想は見事に覆されます。
本筋と相まって
主人公の複雑な生い立ちを含めた
過去のエピソードが
内省とともに語られ
躊躇することなく殺人を行う冷酷さを持ちながら
『レ・ミゼラブル』を愛読し
ジャン・ヴァルジャンのような生きかたに憧れ
エポニーヌに理想の女性像を見出すという
夢見がちな少年のような
主人公の性向が
じわじわと浮かび上がってきました。
孤独で純朴で不器用で
女性との誠心誠意の愛を求め続けた
哀しきアウトローの物語であり
主人公に同情を覚える一方で
自分自身に都合のいい過度な思い込みは
自分自身を後々深く傷付けるということを
肝に銘じておこうと思ったのでした。
そう例えば
大した努力もしていないのに
毎年健康診断のたびに
今年こそは
中性脂肪とお腹周りの肉が
減っているんじゃないかしら などという
幻想を抱くこととか…
௭りゅぬ௭
2021/02/22 01:15:01
こういうジャンルも読まれるんですね~!
北欧ミステリはアーナルデュル・インドリダソンしか読んだことないのですが、
ネスボのこの作品は、最近流行りの北欧ものと一味ちがう小説のようですね。
"信頼できない語り手"というか叙述トリック的なミステリなのかな?
不幸な生い立ちをどう乗り越えるか。
開き直って深淵に落ちるか、死んだふりして諦観するか、
あるいは"解離"して幻想に生きるか……
Qアノンを疑わないトランプ信者のような、現代の闇を想って怖くなりますね。
だけどお腹の脂肪を見て見ぬふりをするのは、
最も身につまされる恐怖ですよねぇ((゚□゚;))
たまねぎ
2021/02/21 21:53:04
ミステリーとかサスペンスでも、ただ事件を解決しました~とかよりは
主人公そのものの人生とか物語が充実していると
読み応えがあって好きです。
都合のいい思い込み、しょっちゅうやってますわ~
日中に食べたお菓子の糖分やカロリーはすべてなかったことにしてますし・・・w
とり合絵図
2021/02/21 16:10:50
組織に貢献し仲間やボスから認めてもらいたいとか、
麗しい女性を守って感謝され、そして・・的なものは
原始時代から男の遺伝子として埋め込まれている感じは否めないです。
もちろん私もですが・・・。
スターダスト
2021/02/20 16:17:10
カテゴリーとしてはハードボイルドになるのでしょうか。
「自分自身に都合のいい過度な思い込み」は
男の専売特許ですね。
それが手痛いしっぺ返しとなるとわかっていても
繰り返してしまう。
でもそれがあるから
物語が生まれるのでしょうね。