12冊目、読了!
「心淋し川」 西條 奈加 著
直木賞受賞作だけあって、読み応えがあった。
江戸の片隅、どぶ川沿いで懸命に生きる人々の
ささやかな喜びと深い悲しみが胸に沁みる感動連作!(本の帯より)
6編の短編は、それぞれの住人が主人公になり物語が進む。
どぶ川沿いの芥捨て場のような長屋が、みな舞台になっている。
時折、差配(管理人のような人)や楡爺とか端役になり登場する。
住人の生活ぶりや、人に言えない事情を抱えてこの地に
たどりついてきたそんな人たちだから、他人の事情は深くは突き止めない。
話したくない過去は聞かない。人間ドラマが何とも言えない味がある。
6編目は差配の茂十の話。通しで出ているのだが、
ここに住んでいるのは、息子のかたき討ちの為。
その敵がぼけてしまった楡爺ではないかとにらんでいる。
あの殺傷事件も雪の日だった。
あることをきっかけに正気になり、真実が分かる。
同じ息子を失った親同士ということが分かり、かたき討ちを諦める。
奇異なめぐりあわせが生んだ悲劇である。
現代の日本では考えられないような人身売買。
ひどい人もいるけれど、やさしい人もいる。
お金が無くても、他人とのかかわりあいでも生活できる。
贅沢ではないが、ほんの些細な幸せを感じながら生きている。
また求めるものも欲張らず、口ではとやかく言っても
ある意味悟っているような生き方なのか、はたまたあきらめなのか。
「生きなおすには、悪くねえ土地でさ」差配の茂十の言うことば
何か特に理由があるわけでもないが、心を打つ。
今は、プライベートを大事にする生活様式になって
小さな子供まで一部屋も与えられ、核家族の生活様式。
血縁家族でさえ同居が減っている。
繋がっていて良いこともあるが、その逆も多い。
「幸せに生きる」ということは、人それぞれだが考え深い。