【第7話】天使坂のソロキャン
「ねぇねぇ天塚クン、一緒にソロキャンしない?」
「えっ?一緒に行くってのは、ソロキャンって言わないんでは?」
4月後半、そろそろゴールデンウィークが見えてきた頃だ。俺は履修した講義を二回りほど出席して、なんとか大学生活に慣れてきたとこ。学生時代から勉強だけはそこそこやっていたので、一般教養の法律系講義とか、社会系のメディア学とか、新しい分野の勉強にもなんとかついて行くことができていてちょっと一安心していた時だったよ。
同じ学部なので、時々神田さんと校舎ですれ違う。
神田さんは、女友達と会話しつつこちらに気付くと、満面の笑みを俺に投げかけてくる。
で、あれから何度か学食で一緒にランチする機会が2回ほどあってさ。
神田さんは屈託のない表情で、やや緊張気味の俺を引っ張って会話を繋いでくれていたんだ。
それで…3回目のランチの時、神田さんがキャンプに誘ってくれたんだ。
「細かいことは気にしないの。二人で行っても、テント別だったらソロキャンでしょ?」
俺はちょっと戸惑いながら
「まぁそれはそうなんですけど…」
神田さんは食後のコーヒーをひと口すすって、髪かき上げたりなんかしちゃって。
「じゃあ決まりね。あたしの知ってるキャンプ場、大宮高原なんだけどいいとこだよー」
「え?大宮高原? あそこメッチャ人気あるキャンプ場じゃないですか。初心者の俺も知ってるくらいですよ?」
「そうだよー あたし毎年、この時期に行ってるのよね。だから、天塚クンもどうかなって思ってさ」
相変わらずよく笑うよなあ…神田さん。
切れ長の一重の瞳(本人は二重じゃないことを気にしてるみたいだけど)、ツンとした鼻すじ、ちょっと意地悪く見える、両サイドが上がった唇…その表情を見てるだけでも俺は飽きないなって思ってたのは内緒だけどね。
「いいですね。行きたいですけど…でも今からじゃキャンプ場の予約取れないんでは?」
人気のキャンプ場だけに、連休の予約はもう取れないだろうな…って内心思いつつそう訊ねてみると、
「安心しなさい天塚クン。もう予約は取ってあるんだよ。並びのオートキャンプサイトをね。しかも大宮湖の目の前の一等地だよ?」
わぉ…
既にもう決めてたんだ。俺の意見聞く前に。てか、断らないことを前提にしてるその強引さに、俺は苦笑して、
「神田さんらしいですね。ハイ分かりました。お供しますよ」
おや?
あれ?
神田さんは一瞬真顔になると、ほっと溜息もらして…そしてへらっと顔を崩したんだ。
表面上の強気の裏に、ちょっと本当の彼女の気持ちが垣間見えたような気がしてさ。
「よかった…天塚クンに断られたらどうしようかなって思ってたんだよ!ありがとね!」
「いえいえ こちらこそよろしくお願いします」
神田さんはうんうんと頷きながら
「じゃ、来週の木曜日ね!」
その時だった。
俺のスマホが振動したんだ。
見ると、クマさんと桐谷さんのグループラインに着信が。
「え?」
俺はそのLINEを読んだんだけど、ちょっと慌てた。
”来週の木曜日、大宮高原でキャンプの予約が取れたぞ!オートキャンプサイトが3つだ。少年、桐谷さんっ!一緒に行くぞ!”
マジですか?
なんでよりによって…同じ日に同じキャンプ場に?
しかもクマさん、あんたも、俺が行くのがさも当然のようなメッセージ投げて来るんだ?ってさ…。
しかも、君のレス早いだろ!
”もちろん行きますよ!ジャンバラヤなんてお好きですか?”
しずかさん、食いつきすぎですよ…
「どうしたの天塚クン?」
俺がなんだか戸惑ってるのが分かったんだろうな。神田さんが俺の顔を覗き込んできた。
「あ、いえ…なんでもないですよ」
「なんでもないことないでしょ?」
何でだろう。
俺は、神田さんの存在をクマさんやしずかさんに知られるのがちょっと怖かったんだよな。
(続く
綿結りさ
2021/05/08 08:15:45
少年!
存在をしられるのが怖い訳を考えるのだ(๑ゝڡ◕๑)テヘッ
んー
でもー
なんとなく、その気持ちわかるような(◡‿◡*)❤
わかんないようなわかるようなわかるようなw
次の展開を待ちます(ワクワク)
sanngo
2021/05/08 01:40:16
ソロキャンプ、楽しそう・・・
次回はどうなるやら~!
バジル・
2021/05/07 21:47:14
おおお~~~ダブルブッキングするんだね( *´艸`)