仮想劇場『月光蝶』

自作小説


空白の時間を埋めるものはない
空白は空白のままで空っぽの人間を演じる
相も変わらず前に進まぬ足を持て余しながら
言葉ではない何かで心をそこに残したいと思った

邪気や邪念に追われた日々を懐かしいとは言わない
もとより後悔しないための旅なのだと自分に言い聞かせている

明かりを落とした部屋にポツポツと蛍火が灯る
その一つ一つがつい先日までは大切な思い出だった
本当の僕を知る唯一のひとの手がかりはもうない
今は一筋の月明かりだけがこの仮面を照らしている







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