【第9話】天使坂のソロキャン
連休の中日、大宮高原はスッコーン!って言っていいほどのド晴天。
俺はアクティを運転しつつ、途中の道の駅での買い物という目的もあって(高速料金を節約するのが主な理由だというのは、言わない約束だよ)一般道路をのんびり走って到着した。
神田さんはまだ来ていないみたいだ。
結局俺は、クマさんとしずかさんの誘いを断る形で、それでも同じキャンプ場でオートキャンプするってことになっちまった。
受付を済ませてサイトに車を停めると、周囲はもうたくさんのキャンパーたちが既にお店広げてたよ。
俺はアクティから荷物を下ろし、テントを張る。吊り下げ式のドーム型なので手早く設営完了し、ふぅ、と一息漏らした時だった。
軽くクラクションが背後で鳴った。
「天塚クン!お待たせ!」
神田さんの乗ったイエローの、ホンダのN-VANが俺の横のサイトに滑り込んできたのさ。
ん。
なんかいい感じだぞ?
髪を束ねてシュシュで1本に纏め、幅広の帽子を被って、レッドのカットソーにスリム系デニムで若干ボーイッシュな神田さんが車から降りてきたんだよ。
「神田さんってそんな服装もしちゃうんですね…普段はお嬢様系なのに」
そう話しかけると、若干照れたように
「生意気なこと言うんじゃないわよ。キャンプの時はいつもこんな感じだよっ」
なんか少女っぽくて可愛いな…ってちょっと鼻の下を伸ばしかけちゃった。
「天塚クン、テント手伝ってよ」
「わかりました…てか神田さん、テントけっこーでかいの持ってきたんですね」
彼女がN-VANの荷室から下ろしてきたのは、スノーピークのアメニティドームテントだったよ。これって高いんだぞ…しかも大人3人が余裕でキャンプできるくらいの大きさだし…
「うん、ソロ用のテントもあるんだけど…せっかくの連休キャンプだしさ、頑張って買っちゃったんだよねー」
俺から顔を逸らすようにして小さな声でそう呟くように答える神田さん。
そかそか、思い切ったんだね?
ん…でもなんで思い切る必要があったんだろ?
「まーいいじゃん。まだお昼すぎだしさ、一緒にお茶しない?」
神田さんは焚き火台と小さな薬缶とオガクズ炭を出して、俺が設置したテーブルの上に置いてにっこりと微笑んでさ、マッチで炭に火を点けて。
なんか嘘みたいだ。
まだキャンプ2回目なのに、年上の美人と一緒に過ごしてるよ、俺。
大学入学前には想像もできなかったんですけど?
俺たちはお互いにローチェアをテーブルに向かい合うように置いて、炭でお湯を沸かして、何となく世間話みたいなものしつつだ、神田さんが淹れてくれたコーヒーをゆっくり飲んでいたんだよ。
焚き火台の炭が赤くいこっていて、ようやく傾きかけた春の遅い午後の陽射しが神田さんの背後で踊ってた。
「なんかさー 男子とキャンプ行くなんて初めてだよ。ちょっと緊張しちゃうね」
ドリップした2杯目のコーヒーを飲みながら、俺を見て笑顔でそう話してくる神田さん。
「俺もですよ。めっちゃ緊張してます!」
「そうは見えないよ?」
「なことないですよっ」
「ん…まあいいよ。で夕食は何を作るの? 今夜の夕食は任せてくれって言ってたよね」
「はいっ!カレーです!キャンプ飯の定番と言えばカレーですから!」
「中学生の郊外学習じゃないのよっ!」
他愛もない会話が心地よく、俺はいつしか頬が緩んできていてね。
その時だったよ。
「おや少年!ここにいたのかっ!」
もうね、振り返るまでもないっすよ(汗)
しぶしぶ声の方を見やると、ハイエースの窓から顔を突き出して、俺の方に手を振るクマさんが見えたんだ。
助手席には…もちろん 鎮座されてますよ。
しずかさんがね。
ソロキャンパーだったら…自分の車で来て欲しいよ、しずかさん…
「なんだなんだ、こんなでっかいキャンプ場で…しかも隣同士だとはなっ」
受付で渡されたサイト指定カードを見ながらクマさんが大きな声で笑った。
(まぁ予感してたんだが、)ほんと漫画か何かって感じのシチュエーションだ。
ん?
しずかさん、無言で車から降りてきてさ、ニコニコしてるんだけどなんだか怖いオーラが発散されているような気がしたんだ(俺の思い込みかもだけどね)
「こんにちは天塚クン。で…お隣の美しい方は、誰なの?」
(続く
バジル・
2021/05/13 22:12:57
おおお~~~神田さんとしずかさんのご対面~~~~^^
神田さんの雰囲気の描写、カラフルで良い。イエロー、レッドそしてデニムの青・・・テントの色は?
しかも大人3人・・・一緒に泊まるのぉ~~~( *´艸`)
hatico
2021/05/13 05:53:36
おっと~!鉢合わせ~w
炭がいこるって言うんですね~
知らなかったです。
sanngo
2021/05/12 21:37:00
wwこの先どうなるんでしょ~
落ち着いたらアップしてくださいね