21冊目、読了!
「まぼろしハワイ」よしもとばなな 著
この本は、ハワイに旅行した3つの短編からなっている。
「まぼろしハワイ」
「姉さんと僕」
「銀の月の下で」
小説の主人公たちは、両親の離婚や再婚、捨て子、自殺、交通事故による死別と哀しい体験がある。心の奥深くに癒えない傷を持っているような人たちだった。
ハワイに来て、窓辺で甘い香りの風に吹かれたり、キラキラな海を眺めたり、浜辺で月の光を浴びたり、それぞれに楽しんでいる。また、昔の友人に会ったりして、無理に入り込まない距離を置く優しさに心が解放される。幼い頃の思い出に涙したり、知らなかった母の優しさを感じたり、偶然に知人に会い、自分の深い悲しみに寄り添ってもらい、その悲しみから開放される。それは偶然ではなく導かれた運命なのかもしれない。主人公たちの人生や考え方が、ハワイに来たことでその自然に人により変わっていく。人ってきっかけさえあれば変われるんだとなぜか嬉しく思う。
私はハワイには一度しか行ったことはないが、暑さばかりが気になって、夢見るようなことは全く起こらなかった。もう一度行って、自分が変われるほどのハワイの魔法にかかってみたい。しかし、ふと思った。私は人が思うほど不幸な生い立ちや環境でなかったから、何も起こらなかったのかなと。