あなたに会えてよかった♪

けーすけ

なんでも思いついたことを書いてます^^

【第3話】黄昏のソロキャン

自作小説

「少年っ! そんな寂しそうな顔をするなっ!」

クマさんがテントを設置し終え、俺の方を見てちょっと笑いながら大声で。
「そうだよ。いくら沙織さんがいないからってさー 私たちだっているんだからねっ」
テーブルで野菜を刻んでいるしずかさんが背中向けたまま乗っかってくる。
「いえ 別に寂しくなんかないですよっ。てかクマさん、俺はもう20歳になったんだから、いつまでも少年って呼ばないでくれませんか?」
俺はちょっと頬膨らませて反撃に出てみる。

週末、本当なら神田さんと2人でキャンプする予定だったんだけど、2日前に急に神田さんから電話がかかってきたんだ。
「ごめん!天塚クン。今度のキャンプ行けなくなった…」

俺は驚いて
「えっ どうしてですか?」
「うん…そのね…」
「…はい」

聞けば、神田さんのバイト先の先輩が就活のためにバイトをやめることになったらしい。その送別会がちょうど、キャンプの約束をしてた日だったんだって。

「そっか…じゃあ仕方ないですね…残念だけど、その先輩を盛大に送り出してあげてくださいね…」
電話は一瞬沈黙、その後やや乾いたような声で、神田さんが答えたんだよ。
「うん ありがとう 分かったよ…」

そんなこんなで、神田さんがいないので正真正銘ソロキャンの予定だったんだけど、そこに声かけてきたのがクマさんとしずかさんだった。
てなわけで俺たちは、なぜか定番の3人のソロキャンになったってわけさ。
(3人なのにソロキャンってのもなんだか妙な感じではあるけどね。まぁテントは別々だからその辺突っ込むのはナシで)

「そうかっ!少年も20歳になったかっ!じゃあ、お酒も解禁だな!」
豪快に笑いながら、クマさんは紙コップに溢れんばかりにビールを注いで差し出してきたんだよ。
「えええっ 俺、酒飲んだことないですよ?」
慌てて手を振ってビールを拒否したのは言うまでもないよな。

「さ、今夜は燻製だよ。それとサラダだからたーんとおあがり!」
しずかさんが段ボールの燻煙ボックスを開けて、中からつるしたソーセージと、網の上でこんがり燻されたサバの切り身を出してくる。桜とリンゴのチップを使ったようで、いい匂いがしてきてね。

ひと口、サバの燻製を食べてみた。
う…うまい!

「少年っ!これも食え!ベーコンとチーズの燻製だ。下処理に黒コショウを振っておいたからちょっとスパイシーかもしれんがなっ」
クマさんが別の、アルミ製燻製機からトングでつまんで俺の皿にぽんぽんと置いてくる。
「ありがとうございます!…んっこれもうまいっ!」
やっぱり今夜も、俺は料理せずに2人にご馳走になるってパターンだなって。

夜も更けてきた。
クマさんは持ってきた缶ビールを6本も空けて、既にふわふわしてきたので、俺が体支えてテントに寝かせてきた。
しずかさんは呆れたような顔しながら、手にしたワインが入った紙コップを口に運んでいてね。

「ご苦労様、天塚クン。クマさん重かったでしょ?」
俺の額から、一筋の汗が伝ってるのが、薄暗いカンテラの灯りでも確認できたようで。
「いえいえ大丈夫ですよ…」
俺はしずかさんの向かいに座り、クマさんが飲み残した缶ビールをちらっと見て。

「あはは。試してみる?ビール…」
「いえ…いや… うんちょっと試してみようかなって…」
クマさんに勧められても拒否った俺だけど、しずかさんのお誘いには楽々と乗っちゃうとこは、ほんとバカなんだよね。

「でさ…天塚クン?」
「はい…?」
ビール1缶で真っ赤になってる俺に、しずかさんの柔らかな声が届いてきた。
一瞬ひんやりとした夜風が、キャンプ場の木々を揺らした。
吊るしたカンテラがギシギシと左右に振れた。

そして、しずかさんの鋭角的に切れ込むシュートが俺のゴールネットを突き刺すように打ち込まれてきたんだよ。

「沙織さんのこと、本当に好きなんだね…?」
(続く

  • バジル・

    バジル・

    2021/07/05 21:49:01

    ・・・クマさんと、しずかさんは、付き合ってるの?かなぁあ・・

    PC修理中に、どんどん話が展開してるのね~~~^^

  • sanngo

    sanngo

    2021/06/15 00:51:19

    やっぱり・・・みたいな展開!?
    さあ、次回はどうなるか楽しみです(^^♪