【お話】遠い約束
昔、星降る夜。出会った子と幸あれと祈りあった。毎年、祈ると約束した。誰だったのかはもう、思い出せない
もらったステキコーデ♪:21
昔、星降る夜に。
出会った子と、祈りあった。流れる星を見上げながら。
幸あれと。
あなたに、幸あれと。
また会おうねと約束して、
けれど二度と、会えなかった。
あの子がどんな顔をしていたのか、
どんな風に笑って、どんな風にしゃべっていたのか、
もう、思い出せない。
時の流れに、わたしの記憶も、わたしの心も、さらされる。
波が穏やかに、石を丸く磨くように、
悲しみも、痛みも。ゆっくりと洗われて、削られて、
おぼろになってゆく。おぼろになってゆく……。
ただ、
約束があった。
それだけは、確かなこと。
『また、会おうね。
また、一緒に。幸あれと、祈りあおうね。
あなたに、幸あれと……。』
今日、ここで。星降る夜に。
わたしは一人、夜空に祈る。
おもかげ。記憶。遠い約束。
全ては時間とともに、おぼろになってゆく。けれど。
確かに、約束はあったのだと、
わたしが覚えている限り、約束は続いているのだと、
そう思いながら、星に祈る。あなたに幸あれ、と。ただ。
***
現実とファンタジーと。
出会いは確かにあって、その相手とは、二度と会えなかった。
果たされない約束だけが残って、心の傷をいやすのに時間がかかって、
彼女自身にも夢だったのか、本当のことだったのか、わからなくなってゆく。
そうして彼女はいつか、自分の子供や孫に、むかし、妖精さんと仲良くなったと、会って話をした、と。出会った子との思い出を、話すのかもしれません。