白薔薇 友人 2021/07/03 08:40:53 六十歳で出稼ぎをやめて、郷里の八沢村に帰ることにした。 純子とはもう逢えなくなるから、最後の日に「新世界」に白薔薇の花束を抱えていった。 彼女の前に真っ直ぐ立って、「さようなら」と花束を渡すと、「ありがとう」と白薔薇に顔を埋めた彼女は、強い香りの中に閉じ込められたようだった。 悲しみが喉を突き上げたが、泣きはしなかった。 ー 『JR上野駅公園口』 柳美里 ー