【第14話】青空の行方~ゆくえ~
「ん… どうなるんだろ、男子が女子を指名するってハナシだけど…」
結衣は、本棟のミーティングルームに集まった同じ班のメンバーたちから少し離れたところに立つ沙也加に話しかけてきた。
沙也加は一瞬目を見開くと、ちょっと切なそうな光を帯びた目線を下げて
「そうね… でもちょっと、ドキドキじゃない?」
「うんうんっ 誰が声かけてくれるんだろう…ってね」
結衣は天真爛漫な笑顔見せると、男子生徒がふんわりと何となく固まって、それぞれが密談している姿を見やって。
『拓海…誰誘うんだろ…』
さっきから沙也加の胸を行ったり来たりしている感情はそれだけだった。
隣で色々話しかけてくる結衣の存在が、少しだけうとましく、そしてそれ以上に羨ましいと思っていた沙也加。
たった1日で、なんでこうこんがらがっちゃったんだろ… そう思うとなんだか気持ちの持って行き場所がないように思えて。
沙也加はさりげなく結衣の傍から立ち上がり、窓の外を見るような風情で男子たちが集まっているドアの近くに進んでみた。
盗み聞きしてるんじゃないよ…と自分に言い聞かせながら窓の外を見る素振りで聞き耳を立てる。
「なぁ、涼は誰を誘うんだ?」
健人は座ったまま小型のラジオを聴いている由宮涼に話しかけた。
「ん?俺のことなんてどうでもいいだろ?」
「そうはいかねーよ… やっぱ…天塚か?」
へ?というような表情を浮かべた涼は、健人を見上げて
「なんで俺が天塚を誘うんだよ?あ、そうか…肝だめしでペアになったからか?」
「まぁそれもあるけどな… 天塚がなんとなくお前に興味ある感じだからさ」
健人は女子が固まっている方をさりげなく見やって答える。
確かにそうだ。
天塚楓が、座ったままの涼を、熱っぽい視線で見つめているのが分かった。
「いや、誘わないよ?俺は…」
「なんでだよ?」
ハモったのは、別組で話をしていた一平と拓海。いつの間にか2人の会話に参加してきたってとこだ。
「めんどくさいな… 何でもいいだろ?」
手を振って抗議の主張を示す涼。
「いいから話せよ。楓はお前の誘いを待っているんだぞ?」
自分の想いを押し隠して、拓海は涼に詰め寄っていく。
『なに…?なんなの? 拓海ってば、なんで楓と涼をくっつけようとするの?』
会話をそれとなく聞きながら、沙也加は不思議な気持ちでいた。拓海が楓のことを意識していることは分かっていた。そして楓が涼のことが気になっているのもわかっていた。
だったらなんでだろ…?理屈に合わない…
「めんどくさいなあ…言わなきゃダメか?」
「ぜひ聞きたいね…」
涼はため息をつく。そして
「あ、俺のダンスの相手が来たみたいだ」
「え?ダンスの相手…?来た…?」
涼が指さしたのと同時に、勢いよく開いたのは、このミーティングルームのドアだった。
「待たせたなっ!」
「ま、槇原先生…」
一平がぽかん、と口を開けたまま立ち尽くしたのも無理はない。
「な…なんでそんな恰好で…」
槇原先生は、何を勘違いしたのかパープルの光沢イブニングドレス姿、胸元ざっくりで、髪をくるくると巻いて頭の上で纏めた姿はまるでサザエさんの正装だ。
「なんだ?お前らワシのセクシーな姿に見とれているのかっ?」
鼻をひくつかせて得意げな槇原先生。
「涼って… なんで槇原先生と…?」
さりげなく部外者を装っていた沙也加が思わず声を上げたのは無理もない。
「だって仕方ないだろ… ダンスの相手しなきゃ、天文部を廃部にするって脅かされてたしさ… もう誰かこの先生を何とかしてくれよ」
諦めきった表情で周囲見渡す涼だったが、その言葉に反応するものは誰もいなかった。
(続く
バジル・
2021/10/07 21:12:17
槇原先生・・・オチャメ~~~(#^^#)
ダンスの相手は、先ずはクジ引きだよ~~~ん・・・
hatico
2021/10/07 05:02:24
さてさて~ みんな素直にお相手のお誘いできるかな~?
駆け引きしすぎてこんがらがらないといいねw
sanngo
2021/10/04 00:00:40
ダンス・・・あれ?
先生最高!話まとまるのか心配になってきたね、けーすけさんがんば~!!