南の魔女クレア71
あと少しです。あと少しとクレアは手を伸ばして動く足と両手で這いながら前に少しずつすすみました。ずるっとずるっと其れでも前に進み続けました。そして何か冷たい石に手が触りました。力がみなぎって来るような気がします。クレアは其の力がみなぎって来る力を利用してぐっと其の石を引き寄せる様に自分の体を前に進めました。
「まずは其の石で自分の体を回復させるが良いだろう」と水龍が言いました。「はぁ~・・・。石でなんだって・・・。」水龍は今触っている石も魔石だと言って回復させる力を持っていると言いました。クレアは魔石に「魔女の回復薬」を作る時の様に其れに触りながら念じるとクレアの足の痛みもなくなりクレアはすっかり元気になりました。更に中に進むと石がどんどん多くなって其処には不思議な世界が広がってました。
何でこんなに色々な色の石があるの?とクレアが聞くと水龍は石の色によって魔法の力が違うからだと言います。クレアは水龍に其れを詳しく説明して欲しいと言いました。
水の属性を持つ魔石を持って帰ると水の魔法が使える様に成る。火の属性を持った魔石を持って帰ると火の魔法が使えるようになる。風の属性を持った魔石を持って帰ると風の魔法が使えるようになる。氷の属性を持った魔石を持って帰ると氷の魔法が使えるようになると言いました。
氷の属性の魔石でクレアはボルアートの領土から見た北の魔女がした氷の封印を思い出しました。他の魔女がかけた氷の封印を解く事が出来るかを聞いて見ました。水龍は其の封印の強さによるが他の魔女がかけた封印を解くには其の3倍の魔力が必要だと言いました。
だから其の封印をした時に魔石の力が半分だったとすると魔石は一つと半分の力必要になるという事です。自分はあの封印は解くのはやめようとクレアは思いました。癒しの魔石はどんな色なのと聞くとどの魔石にも癒しの魔力は入っていて自分の本来の力によって使えると言いました。
すっかり元気になったクレアはさっそくどうせ魔石を取りに行くのなら取れるだけ取って帰ってやるという計画を実行し始めました。
まず革で出来た上着の下のタンクトップとパンツがくっついた形をした毛糸の水着の太ももの足の付け根の所を腰に何重に巻いて来た革紐で一足ずつぎゅっと付け根を縛ってふさぎました。此れで水着のお腹の所に石を入れると下へ落ちる事はありません。
まず炎の魔石を縦に二つお腹に入れると其の上からひもでぎっちりと固定しました。次に胸の所に水の魔石と風の魔石を胸のシャツの部分に入れるとがっちりと革ひもで上から縛って固定すると其の上から革の上着をきっちりと来て更に革ひもでぎっちりとぐるぐる巻きに縛りました。
更に氷の魔石と水の魔石二つと風の魔石二つの5つの魔石を何とか両脇に二つ一つを両脇に抱えた魔石を落とさない様に手と顎で固定しながら足をひき釣りながら来た岩の洞窟を今度は魔石を落とさない様に慎重に戻りました。
水に潜る前にくると風の魔石を一つずつ内ももにそれぞれ革ひもで固定しました。
クレアは其の体制で蟹股で歩きながら水龍にまたがると水の魔石を一つずつ脇に挟むと水龍の角を掴みました。
最後に顎で氷の魔石を顎で固定しながら顔を深く水龍のたてがみの中に入れました。
クレアが「出発をしていいわよ。」と言うと水龍がずぶずぶと水の中を潜って行きました。
クレアは首を動かしながら泡玉の中に鼻を入れて空気を吸い込みました。来た時以上に手で必死に抑えてないと迎え撃つ水流の圧で手が離れそうになります。
其れをクレアは必死でこらえながら摺り摺りと前ににじり寄らないと首を動かして行ける範囲の泡玉の空気は既に吸ってしまってなくなってました。
何としても前に進まなければなりません。足を動かして前ににじり進もうとした時に何と水流の圧に負けて片方の太ももに結んであった魔石が取れてしまいました。
其の分しっかりと水龍の胴体に片足は太ももに力を入れてしがみつく事が出来て少し前に進んで泡玉に鼻を入れる事が出来ました。
其の空気も直ぐになくなったのでまた足を動かして前に進もうとすると今度はもう片方の太ももに結んでいた魔石が水流の圧に負けて取れて流れてしまいました。
其のおかげでしっかりと水龍を太ももでがっちりとしがみつく事が出来て両太ももをじりじりと動かしながら前に進んで前にある泡玉の中に鼻を入れて空気を取り込む事が出来ました。其の空気も直ぐになくなって苦しくなりました。
見ると手を伸ばせば届くところに泡玉が見えます。背に腹は代えられません。クレアは脇に抱えていた魔石を一つ諦めて方手を伸ばして泡玉を取って空気を吸いました。手を伸ばした方の魔石が其れと同時に凄い勢いで流れて行きました。
まだ水の中は続きます。息が苦しくなってきて今度はもう一つの手を伸ばして泡玉を掴んで空気を吸いました。
顎で抑えた魔石を何とか持ち帰ろうとするので手で泡玉を自分の口の所に持ってくるより無かったのです。
いよいよ遠くにしか水龍のたてがみの中の泡玉は無くなりました。何とか足を使ってじりじりと前に進みました。其れでも届きそうにありません。片手を話して泡玉を掴もうと必死に伸ばしても届きそうにありません。いよいよ息が苦しくなってきました。
クレアは思い切り両手で水龍の角を引き寄せて体を大きく前に進めようとした時にあごで抑えていた魔石があっけなく外れて流れて行きました。
それのおかげで両手でぐいと角に体を引き寄せるとぐいーっと体が前に進んで沢山の泡玉がある所に顔を近づける事が出来ました。
其れを一つ一つ口に運んで其れらの泡玉も無くなりかけた時に何とか水の外に出る事が出来ました。
水龍は最初に飛び込んだ岩の上までクレアを乗せて来てくれました。
へとへとになりながら岩の上に寝そべるとしばらく放心状態でしたけどクレアは水着の中の魔石が無事にあるかを手でたしかめるとホッとしたのか気を失ってしまったのか眠った様です。気が付くと岩穴の入り口の方が明るくなってます。
どうやら朝が昼かは解りませんが一晩以上は立ったことが解ります。
其の頃マドレとカリドはクレアをずっと閉まりっぱなしの魔女の森の入り口辺りで一晩過ごして次の日の夜になっても帰って来なかったので其々の自宅に戻りました。
二人はクレアが失敗したと思いました。
クレアが温泉の方向に行ったとしても無事なら其れは其れで良いと思いました。
無茶な事をさせた事は自分達も承知してます。
問題は此れからの荒れ果てた港町をどうしたら良いかと言う事でした。
夕日に沈むさびれた小さな漁村の町が此の町の終わりを感じているのか妙に寂しく海鳥たちが泣いてます。
カリドの横を大きな樽を運んでいる見慣れる男達が居ます。
モゾリアナ国の首都のクアナに行く船の倉庫に其れを運び入れています。
彼らはいよいよ此の港町の人々のエキスを吸い尽くしてモゾリアナ国の首都のクアナに今度は狙いを付けた様です。
そうなれば自分達がいくら頑張ってもモゾリアナ国全体で総出で頑張っても撃退するのは難しくなるでしょう。
カリドは己の無力さに深くため息をつきました。
のたもた
2021/12/21 23:52:20
やっと「南の魔女クレア」になりました。
此処からが本番です。此処までが長かったけど其れ程重要じゃない人の名は省きました。
背景が無くて悲惨な結果の所が在ります。
多分此れからもそうなりそうです。