NIPPON RISE
おまけ
「やべえな」箭兵衛が呟いた。
「俺は今度で死ぬかもしれないと女神に言われた」
龍一は聞こえてない振りをした。久し振りの北海道で、
何年(ドラゴン歴)振りかのジンギスカンを楽しんでいるのに、
あまりにも無粋だ。
「この玉葱うめえなあ。もちろん肉も最高だぜ」龍一は投げやりに答えた。
「札幌黄だよ。この時期しか食べられない」
箭兵衛は人の形をしているドラゴンの 眼をしらっと見つめた。
場所は狸小路。明日から戦いが始まる。
「たとえば俺が」箭兵衛が言いかけると、
突然龍一が箸を置き、両翼を拡げて、ドラゴン本来の圧倒的な威圧感で
ジンギスカン屋の個室で急速に本来の姿に戻った。
「ドラゴンの名にかけてお前を死なせはしない。」その目は爛々と輝き、
髭は人間では表現できない好戦的な動きを示し、吐く息は硫黄臭く、
変身による空気の波動が周囲に駆け巡り、店全体が震えた。
すぐさま箭兵衛は一万円札を2枚テーブルに置き、
龍一の背に乗って店の窓から 飛び去った。「急げ!」
もうちょっと食べたかったな。あ、まだピーマンも食べてないし。
ネーバーエンディングストオーリー♪の曲が深夜の札幌の空で奏でられた。
箭兵衛の部屋に着くとドラゴンはすぐに眠りについた。玉葱のアリシンは、
どうやら彼らにとって媚薬の効果を果たすようだった。
眠っているドラゴンは妙に可愛らしかった。どうか今夜は良い夢を見てくれ。
箭兵衛はドラゴンの尾を枕にしながら、(ベッドは占領されたので)
ヒートテックの毛布を押し入れから出し、明日からの戦いの為に備えた。
恒温動物の箭兵衛は北国で眠る作法を心得ていた。
変温動物のドラゴンの尾はひんやりして気持ち良かった。
<予告>
次章「islands」
弧状列島「NIPPON」がどうして、太平洋のど真ん中に「日本大陸」を
形成できたのかを次章で語っていきます。
箭兵衛と龍一とノーチャンスの女神の活躍に御期待ください。
coming soon
って無理だろう!どうやって話を続けられる?ああ!どうしよう!