JAPAN RISING その後②
龍一と箭兵衛は二人(一人と一匹)で住む小屋を作り上げた。
それぞれの個室も設け、最低限のプライヴァシーは尊重された。
だがその日、うかつな事に、箭兵衛は昼食の用意が出来たことを知らせに、
ノックもせずに龍一の部屋を開けた。
一匹のドラゴンが震えながら、いや、細振動のシグナルを
体全体で受け止めながら、
龍語や日本語や(おそらく)様々な言語の端々を虚空に呟いていた。
龍一は自らの身をアンテナにして、自身に必要な情報を得ながらも、
同時に自らの発言を対価として応答していた。
おそらく、全対応型受信送信機能生命体として、全てのソースと交感していた。
「チェルノブイリ、、、、、キエフ、、、、撃墜、、、NATO、、、子供、、、」
箭兵衛の聴きとれた単語はそんな程度だった。ドラゴンは未だ振動していた。
箭兵衛がいることには気付いていない。
そっと後ずさりして、ドアを閉め、粗末なキッチンに戻る。
二人(一人と一匹)分の昼食もまさにどうせ粗末なものだ。
冷めようが、時が経とうが、後で一緒に食べられればそれに優るものはない。
箭兵衛は虫がたからないように、料理にガードをして、
龍一の復帰を心静かに待った。彼の繋がっている世界で一体何が起きているのか。
なんとなく予感した。
暫くの間、彼は姿を消すだろう。いや、ここに戻ってこれるかも不明だ。
日本大陸の東端に夕暮れが迫ってきた頃、龍一は自室を出てキッチンに現れた。
「箭兵衛!実は!」
箭兵衛は精一杯の笑顔で、龍一の青髭面をあやすように揉みほぐした。
「行けよ。きつかったら、俺を呼んでもいいぜ。遠慮はいらないからな」
「箭兵衛、俺は必ず戻る。このままじゃ駄目なんだ!」
箭兵衛は視線を反らし、プラスティック窓の向こうに沈んでいく夕陽を見た。
鍋を薪ストーブの火に掛けながら、料理を素早く温め直した。
「まずはこの札幌黄のポトフを食べてくれ。その後はどこへでも行っちまいな!」
BGM 「もう逢えないかもしれない」 by菊池桃子
もはやBLか?
御約束の女神のモノローグ
『ああ、気持ち悪い!いちゃついてんじゃねえよ』