まったり時間。

しの

ほんのり楽しい、まったり時間。そんな場所。

【お話】桜の花が、ついてきた。

コーデ広場


ふらりと入った、小さなお店。

スミレのブーケと、タイムのクッキーを手に取った。

スミレの花は、あどけない恋心。

恋とも呼べない、幼い思い出をなつかしんで。

タイムの花は、勇気。

前を向いて、ここから未来へ、歩みだすために。

自分をはげますための、花とお菓子。

そうして、何かの儀式のように、お茶を飲んだ。

頼んだのは、桜の香りの、緑のお茶。

きっと立ち上がれる。

前に進める。

そう信じて。

やってきたお茶の、湯気は、

ゆらゆらとして、花の香りがして、

少し、

目に染みた。

泣いたりなんかしない。

泣かない。でも、今は。

少しだけ、うつむいて。

ゆらゆらゆれる、桜の香りの湯気を、見つめていたい。

今だけ。このお茶を、飲む間だけ。

そう、思いながら。

湯気は、ゆれる。

ゆっくりと、時は流れ、

やがて一杯のお茶も、飲み干された。

立ち上がりかけて、

ふと、気が付いた。

花びらが、服の袖についていた。

どこからやってきたのだろう、と思って、

店に入る前、通り過ぎた桜並木を思い出した。

ずっと、ついてきてくれたのか。

わたしがうつむいていた間も、ずっと。

服から、花びらをそっとはずして、

ありがとう、とつぶやいた。


***


物語は、いろいろと想像してください。

失恋したのか、なにかへこむことがあったのか。

泣かないために、お茶の湯気を見つめて、

うつむいているのは、お茶を飲むためだと言い訳している女性。

そんな感じで。


桜の香りの緑のお茶は、八重桜の葉を混ぜたフレーバード(香り付き)のお茶が、いろんなメーカーさんから出ているのと、

茶葉そのものに、ほのかに桜の香りがある緑茶があります(静岡の煎茶「さくらかほり」)。

フレーバードの方が、香りははっきりしているのですが、

ほのかな香りを楽しむのも良い感じです。