素直になれなくて (後編)
口火を切ったのは、金物屋の良子だ。
「女性を容姿で判断するなんてサイテー。これだから、日本の男はダメなのよ。いい歳して、少女アイドルやアニメに夢中になったり、自身がたいした魅力も備えていないのに女性の容姿を値踏みしたり、何様のつもりよ。日本の男は中年になっても幼児性が強いのよ。私が言っているのではないの、新聞にそう書いていたの。」
卓三は、お前も韓流アイドルのイケメンが好きで、コロナの前は韓国に行ったり、新大久保に行ったりしていただろと思ったが、そういう批判は起こるだろうと思っていたので聞き流した。しかし、瀬戸物屋の京子の発言には、目が泳いでしまった。
「乳母って、欧米にもいるんじゃないの。ロミオとジュリエットの恋の仲立ちするのは、乳母じゃなかったかしら。ねえ、良子さん、この前見た、宝塚でも乳母が出てきたよね。」
「そうよ。市村正親が演じていたオデュッセイアもそうよ。オデュッセウスが老人に化けて故国に戻ったけど、老婆が、オデュッセウスの足を洗っていたときに足の傷を見て、オデュッセウスだと気づいたのよ。老婆が乳母だったから、幼い頃についた足の傷を知っていたのね。」
「それに、冷蔵庫の無い時代に、怖くて、あかちゃんに生のミルクなんて飲ませられないわ。国産の液体ミルクが発売されたのは、たった3年前のことよ。子育てしない昔の男は、何にも知らないんだから。」
「卓三さん、どうなの?」
卓三は、最近、耳が遠くなってと言うと、Bluetoothのイヤホンを耳に挿した。
Everybody needs a little time away~~I heard her say~~From each other~~
助けを求めるように、枕草子のことを教えてくれた亀吉の方を見たが、窓の外を見ていて、目を合わそうとしない。「艱難に会って初めて真の友を知る」とはキケロの言葉、「窮乏のときに友たるは、友のもっとも大なるものなり」はプルタルコスの言葉、亀吉、70年の友情も今日ここまでだ。
普段は、どこそこのお寺の菖蒲が見頃だとか、どこそこの嫁と姑の仲が悪いだとか、誰それが若いのに亡くなった。いい人から先に死んでいくとか、人類の進歩に微塵も貢献しないどうでもいい話しかしていない良子と京子がするどい指摘をすることに驚いたが、素直に認めることができなかった。
「乳母には、母乳を与える乳母、英語で言うとwet nurse、子育ての手伝いだけをするのがdry nurseですが、次回まで、ロミオとジュリエットやオデュッセイアの乳母がどちらであるか、調べてまいる所存です。貴重なご意見、ありがとうございました。」
「そういう上から目線のところが、ダメなの。それに、乳母がどうかなんてどうでもいいのよ。18歳の高校生じゃないんだから、いい歳をして、おっぱいなんて言っているところが、ダメなの。卓三さんの話は、二回に一回は、おっぱいの話でしょ。公衆の面前で話したり、書いたりすることじゃないわ。」
電車の中で、卓三は、早く家に帰り煙草を吸いたくなった。昔は、電車の中で、煙草を吸えたものだ。人前で、煙草を吸えないし、おっぱいの話もできない。生きづらい世の中になったものだ。本当に、人類は進歩して言えるのだろうか。車で来ていたら、煙草を吸えた。次回は車で来ることにしよう。しかし、良子も京子も送ってあげない。
電車が塩屋の駅に着き、扉が音を立てて開いた。終点の志度駅も近く、こんなところから乗ってくる人がいるのかと乗ってくる人を見ると、歳の頃は還暦前後で、立派な胸をした女性が乗り込んできた。これまで、大きな胸は歳をとると、重力に引かれて垂れてくると思っていたが、なんとも美しいフォルムをしている。彼女は、同じ側の座席の側に座り、間にスーツ姿のサラリーマンが座っていて、チラチラ見ることもできない。
電車が発車すると正面に瀬戸内海が広がり、電車が車体を傾けながら岬を回り込みはじめた。卓三は振り向いて、外の景色を見ると360度のパノラマのように瀬戸内海に浮かぶ島々や行きかう漁船が見えた。卓三は立ち上がり、景色を見るために向かいの席に向かうふりをしながら、女性の胸をチラチラ見ていたが、キキキキキキーと車輪とレールが擦れる音をたてながら急カーブに入った。
卓三は、外の眺めとおっぱいを交互に見ていたせいで、バランスを失い、電車の床に倒れ込んだ。女性は、座席から立ち上がると、お爺さん大丈夫ですかと卓三を抱え起こした。卓三は、柔らかな乳房の感触を背中に感じた。卓三は、少しでも乳房に触れていたいと、ちんたらと起き上がり、女性の隣に座った。
お爺さん怪我をしなかったと聞かれ、卓三は、75歳過ぎて、足腰も弱くなってかないませんわ。耳も遠くなって補聴器つけているんですよと言って、頭を下げた。女性は、気をつけないけませんよと、卓三の手を握ってくれた。女性に優しくされるのは、10年前に女房がなくなって以来のことだった。素直になればいいことがある。今日から、お爺ちゃんの自覚を持って余生を過ごそうと卓三は決意した。
沖人
2022/05/14 22:13:57
るるもさん
いえ、私は、足首派です。
るるも
2022/05/14 21:06:39
おじいちゃんで得をすると気がつき、素直になる。
やっぱり胸なんですね^^;
沖人
2022/05/12 08:41:27
つん
早く、食べにいきなさい。その時は、大盛で。
つむぎ
2022/05/11 23:04:28
貴公子の沖人さん
美味しそうな 佐倉ブタの「佐倉丼」教えて頂き感謝です^^
沖人
2022/05/11 20:04:24
環謝さん
メガネをクロスで良く拭いて。きっと、曇っているから。そして、すなお~な心で見てみるのです。
環謝
2022/05/11 19:31:16
日記の読者のみなさまもココ見てらっしゃいますよ・・・??
(;-_-) =3 フゥ
沖人
2022/05/11 08:42:19
環謝さん
ニコタ界の聖人、貴公子と呼んでもいいぞ。
環謝
2022/05/11 01:20:07
え?なんて?笑笑
沖人
2022/05/10 22:26:46
スズランさん
盆栽をいじったり、ツボを愛でたりするようになったら男は終わりです。女性を追いかけまわすか、スイーツに夢中になるバイタリティーが必要です。カリクレスは、弱肉強食の原理が正義であり、人間は欲望に忠実に生きるべきだと主張しています。
環謝さん
ほんとそっくり。控えめで、正義感に溢れ、仙人のようです。
つん
佐倉丼は、ぶたさん
https://ameblo.jp/csy-sky/entry-12297383792.html?msclkid=93bcafbad06411ecbe69b4b4b49c4a16
馬肉のさくら丼は、長野
http://kyoudo-ryouri.com/food/2130.html?msclkid=bac6569cd06411ec9d5f0c21fb5d9e89
つむぎ
2022/05/10 22:15:43
菖蒲といえば 昔、潮来の十二橋めぐりを 『元、娘船頭』というマダムの
小舟で廻ったことがありますw
「佐倉丼」とはどんなものかな?
何処でもありそうな ご当地牛の佐倉牛?イヤイヤ さくら=馬肉?かな?
うぅ~ん((+_+))気になるぅ~w
環謝
2022/05/10 17:01:29
卓三さんは沖人さんの将来の夢を表した姿、、、φ(*'д'* )メモメモ っとw
スズラン☆
2022/05/10 16:30:55
良子や京子は帰りに送って貰えなくなったから、
日頃たまった反撃に出たのかもね笑
それにしても、
男は幾つになっても男なんですね(´艸`*)
沖人
2022/05/09 23:53:26
つん
菖蒲園が見頃かもしれませんが、隣の植物園は、有料なのでスルーしました。これからは、舟遊びです。義経の八艘飛びに挑戦してみてください。佐倉城級グルメコンテストで優勝したご当地グルメ「佐倉丼」もお楽しみください。
つむぎ
2022/05/09 22:52:52
おっぱいぼよんぼよんが信仰の対象かどうかは
わかりませんが、佐倉城址公園は行ってみたい所なんですよね〜
とくに!これからの季節が良さげですよね(◍•ᴗ•◍)
沖人
2022/05/08 23:21:00
アリスさん
ハーレムの研究について、本日の読売新聞に書評が出ていましたが。人類の知恵とのことです。
つん
佐倉城の近くにある国立民族博物館を訪れてください。土偶のレプリカが飾られていますが、全て、おっぱいぼよんぼよんです。おっぱいは信仰の対象です。
つむぎ
2022/05/08 22:46:04
(⌒▽⌒)アハハ! なるほど~
「おっぱい」が生涯現役のエネルギーの素
っていう考えも有りなのですねw
もちろん!沖人さんもそうなんでしょ?www
アリス
2022/05/08 22:17:58
沖人さんがおじいさんになったら、こういうおじいさんになるのかな?
いつも、女の人に囲まれて楽しく過ごしていそうだね。
素直な沖人おじいちゃんになってね。
沖人さんの老後のお話みたい。
フフフ
沖人
2022/05/08 21:37:18
ろくさん
世の中には、さりげなくおっぱいに触りたい人が多くいるのですね。なかなかそのようなシチュエーションに出くわすことはないのですが、一番近いのは、散髪屋さんの顔ぞりの時でしょうか。しかしながら、QBカットに通っているので、顔ぞりをしてくれません。
ろく
2022/05/08 20:34:31
容姿で判断しなきゃ何で判断するのさ!って思って卓三の味方についたのだけど、邪な気持ちからの自業自得なのに親切につけ込むあたりがやっぱダメだわとなった。うちの店にもよくいる。
沖人
2022/05/08 17:46:08
たまちゃん
素直が一番です。おっさんになると自分に素直になります。他人から、どう思われようが、気にならなくなります。ゴールデンウィーク中は、パジャマで近所をふらふらしていました。
mさん
井上頼朝は、戦国の有名な不精なのでしょうか。源頼朝は三代で血筋が途絶えましたが、大河の女好きをみていると、ご落胤があちこちにいてもおかしくありません。最近の生物学では、身体も能力も性格も遺伝子で決まるとされているので、優生保護法も間違ってはいないのですが、止めるのが遅すぎたの失態です。
涼華さん
そうです。シュークリームを食べたいときは食べ、うどんの大盛りを食べたいときは、大盛を頼まないといけません。反省は、食べ終わってからでいいのです。
つん
厚生労働省は、生涯現役を推進しています。爺さんばかりになるので、死ぬまで働かそうという魂胆です。人間、働くだけではいけません。おっぱいも大切です。
wine
2022/05/08 17:06:05
お胸ばかりですね。十分素直ですよー
つむぎ
2022/05/07 23:18:49
(;´Д`)え~え~ 卓三さぁん・・・・
お爺さんの自覚を持っても オスの本能は消えないのでしょうねぇ~
涼華
2022/05/07 22:32:44
>素直になればいいことがある。
ホント、これです!
素直になりましょう 皆さん (*≧m≦*)
m
2022/05/07 21:47:29
お金を使い切って、子供(娘中学生)には残さない
↑
・・・私はしませんが、知り合いのおばさんは「私と夫が一緒に事故で死ぬかもしれない、すぐに現金(葬儀費用)が必要になる筈だから子供に300万円入った普通預金通帳を渡してある」
↑
葬儀費用と家の片づけ費用ぐらいは・・・残しておいた方が・・・???
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母方は井上頼〇→井上頼〇→井上頼〇と代々続いていて
井上頼朝の子孫だと言い張っておりますが
私の父は「頼朝に子供は・・・いたかなぁ?」と疑問視してました。
ドラマでは頼朝に子供は・・・いないかな?
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どうなのかなぁ現在の価値判断で過去を裁くのは・・・?
おじいちゃんの振る舞いは・・・私ならごちゃごちゃ言わずスルーですね。
「優生保護法」(1948~1996年)という法律のもとで行われていた、障害者への強制不妊手術。
日本の映画界で相次いで浮上しているハラスメント問題
↑
現在を裁くのはOKだけど・・・あまりに過去にさかのぼってごちゃごちゃ言うのはどうかなぁ???
たまねぎ
2022/05/07 21:31:33
卓三さん、やっと素直になれてよかったですね~♪
きっとこれからは生きるのも楽になるはずです。
そうそう、素直って大事。
ということは、好きなおっぱいの話も今まで以上に素直に語るわけですね。
卓三さんは研究熱心のようなので、ぜひきわめてもらいたいですw
沖人
2022/05/07 17:16:50
寧々こさん
今回の隠れたテーマは、「自己批判」です。共産主義では、自分の「誤り」を「自発的」に認め、公開の場で自分自身を批判する事を指すそうです。自己批判をしても、改心しないのが私であります。
寧々こ
2022/05/07 16:47:54
こらこら