1回だけの「たり」
最近、テレビを見ていると、
質問するときの「たり」の使い方が気になります。
「たり」は、通常は同類のことを複数回繰り返す形で用います。
「見たり聞いたり」とか、「舐めたり吸うたり」とかですね。
「同類のこと」というか、「正反対」のことでも使います。
「泣いたり笑ったり」とか、「入れたり出したり」とかです。
また、複数あることの中から代表例を挙げるときに、
一つの言葉に「たり」を付けることもあります。
「休日は何をしていますか」と問われて、
複数ある過ごし方のうち代表例として
「映画を観たりします」と答えるような場合です。
映画鑑賞以外の過ごし方もあるけど、
その列挙は省略して済ます言い方です。
しかし、最近は質問する側が
一つの言葉に「たり」を付けるのをよく聞きます。
「休日は映画を観たりしますか」という聞き方です。
この場合の「たり」は何を意味しているのか、
質問の陰に隠れている他の選択肢は何なのか、
単純に「はい」「いいえ」で答えてよいのか、
答える側は戸惑わないのだろうか。
もっと分かりにくいのは、
「映画が好きだったりしますか」という聞き方で、
「好きだったり嫌いだったりしますか」という意味ではないと思うのですが、
何を質問しているのか分かりません。
単純に「休日は映画を観ますか」、「映画が好きですか」と質問しないのは、
イエスかノーかの明確な答を求めて相手に圧迫感を与えないよう、
相手に逃げ道のある曖昧な聞き方にしようとして
「たり」を付けているのだろうとは思います。
他人に圧迫感を与えないことは優しさなのだと思いますが、
気を遣い過ぎて質問の趣旨が分からなくなるのは、
いかがなものかと感じています。