ガラクタ煎兵衛かく語りき

戯言

日記




実は今まで黙ってたけど 僕の父はとある国の総理大臣なんだ
ごめんね 隠してて

今 2世問題が問題になってるね
でも宗教関係だけじゃないんだよ
政治マターでもそれは存在するんだ

昨晩 突然父の居室に呼ばれた
いつも優し気な父の眼差しが
その時は心なしか きつく感じられた
普段より酒量も上がってるみたい
そして父は言った


「煎兵衛、お前に総理秘書官になってほしいと思っているんだ」


僕の目の前に何かが現れた
最初はよくわからなかった
何かがグルグル廻っている
それは拒否したい肌触りの何か


「煎兵衛、お前に私の跡を継いでほしいんだ」


僕の目の前に現れた何かは
次第に僕に近づいてきた
黒い 光を透過させない
得体の知れない何かで出来ている


部屋の机の椅子に座っている父
部屋の中心に立っている僕
その間を その黒いものは
グルグル廻りながら僕に近づいてきた






急にいろんな光景や声が
それまで包まれていた球形の水晶玉の中から
僕の中に飛び込んできた



父(母)が私の人生を決めるんです
それ以外に生きようがありません
俺は反抗しようとした
ただ 抗う術を知らなかったんだよ
学校は何も教えてくれない
先生?
彼らは俺だ

それでいいんだと思ってました
正しいことだと思ってました
ヒトに勧めました
愛を込めて
みんなで幸せになりましょう
あなたもわたしもひとつのカゾクです




グルグル廻っていた黒いものが僕に襲い掛かろうとした瞬間
その一瞬だけ なにかの隙間から真実が見えたような気がした
うん 確かに見えた
石碑のようなもの 墓名碑のようなもの そして その表面には 
〈人間の歴史〉と 刻印されていた


次の刹那で僕は膝から崩れ落ちた
最後に微かに覚えている怨念に似たものを以下に記す


『僕は4世なんだけど』