我が身の業
そう言ってもらえたら
我が身の業も救われます
朝は明けていた
昨晩の突然の来訪を自然に受け入れてくれた老婆は
しばらくのもてなしを私に与えてくれた
翌朝 いくばくかの快適な睡眠とおばんざいを頂戴した私は
できるだけの正常心で 彼女に正対し 切り出した
「娘さんのことです」
彼女は不意に視線を窓外に逸らせながらも
しばらく辺りを確認しながら
そして私にしわがれた声で(あたかも告白したかのように)
こう発声した
「そう言ってもらえたら 我が身の業も救われます」
帰り道 辺りの緑の豊かさで眼が回復した
ここは何て緑が豊富なんだろう
娘殺し
事件的には簡単な案件だった
私は何もしていない
私は何も言ってない
ただ語りかけただけだ
緑
グリーン
母と娘
案件以外では興味はない
ときどきこんな稼業に嫌気が差すときがある
私は何も言っていない
それなのに
対象者がことごとく堕ちる
稼業なのか
いや こんなの続けられない
こんな私の特性を知った 検察 いや特捜 いや 公安は
次はどんな事件に私をぶっこむのだろう
私は自分自身の正体を
見究められない体たらくなんだ