畑に畝を作る
最初はただの地面
どこにでもある地面
さあ、始めるか
それまでの経験や伝聞を予め用意しておく
そしてそこを耕してみる
裏返った土の色や匂いや水気を確認する
これはあれに
こっちはそれに使えるかもしれない
収穫までの道筋をある程度イメージする
でもその前に群が移動するかもしれない
あいつらがやってくるかもしれないから
いったん移動したら、またここに戻ってこれるかは不確定
心を決める
畑に畝を作る
いくつもいくつも作る
最低限の私達の群れが飢えない程度の収穫量を想定し
経験は年寄りに
伝聞は最近入った別の人に訊きながら
畝を作る
畝を作ると決めた
作った畝の低いところに種、或いは苗を植える
流れ出ないためにだ
芽が出るか、茎が出るか、花が咲くか、実をむすぶか
そうやって経験は蓄積される
男達は肉を獲りに行く
とても大事なことだ
それで飢えを何度しのげただろう
でも
とてもそれは危険なことだ
半数しか戻ってこないときも普通だった
”飢える”という私の言葉が
近くに住んでいる別の群に広がっていった
飢えていない群と飢えている群
情報交換や、かって所属していた群から離れ
なんとか別の群に辿り着いた人からの伝聞
そして交易のような行動が始まった
最初は手探りだった
群内の言葉がお互い違うため、交渉は難航しがちだった
でも、ふとしたきっかけで
場面転回が起こった
私が「飢える」と云った瞬間、相手が云った
「well!」
と同時に、笑顔で頷きながら、当初こちらが提示していた穀物を指差し
「Meat!」「Meat!」「Me Too!」と、自らの倉庫を指差した
相手が心変わりしないうちに、交渉を早めにすませた
畑に畝を作る
作物の種や苗を植える
昔ながらの生き方しかできない
それしかできない
それらはすべて先達のおかげで成り立っている
新しい風が吹いている
それが、良い風なのか、悪い風なのか、知る術はない
でも、こうして生き続けていれば、いつかわかるのかもしれない
そしてクロマニヨンが私達を狙っている