せんちゃん

弐瓶勉

マンガ

弐瓶勉の作品のうち「シドニアの騎士」「BLAME!」「人形の国」について

徒然に語ろうと思う。

わたしが最も好きなのは「BLAME!」だが、人に最も勧めにくい作品でもある。アニメ映画版の「BLAME!」は映画としての体裁のためにストーリーの骨子がしっかりしていてエンタメ性もあるが原作漫画にはそれらがない。雰囲気はカフカの長編「城」に近いと思う。主人公は城を目指しつつ暗い街をひたすら漂う。「BLAME!」での主人公は「ネット端末遺伝子」を求めてひたすらに都市を彷徨うのだ。

「BLAME!」では、むしろその「都市」自体が主人公と言えるかもしれない。その広大さと虚無感。「地面」も「空」も目にすることはない壊れつつある人工構築物だけの世界。その一方で生命のない機械が休むことなく新たな都市を構築し続ける。平行にも垂直にも無限の拡がりのある大都市を一匹の蟻が彷徨うような虚無感。そして、主人公をはじめわずかに残る人を際限なく攻撃する機械生命体。そこには敵を倒すカタルシスもなく在るのはただ寂寥感だ。そして、無限に思えるその彷徨の果てにあるものは…。

弐瓶作品の入門として最もお勧めなのは「シドニアの騎士」。この作品では主人公は現生人類と同じ身体機能を持つ。なので、読者は彼に感情移入しやすい。「地下」で父親と二人きりで暮らしていた主人公は父親の死後初めて禁じられていた地上への階段を登る。
地上にいたのは主人公と姿かたちこそ変わらないが身体組成が変化した人類だった。彼らは光合成能力を持ち食事は週に1度程度で足りる。なぜ、主人公は地下に隠れるように父と住んでいたのかの謎は徐々に明かされるが物語の骨子は「ガウナ」と呼ばれる宇宙生命体との戦闘である。

「エナ」や「ヘイグス粒子」といった弐瓶作品に以後当たり前のように出てくるワードについてこの作品で理解すると他の作品も理解しやすくなる。

宇宙生命体との闘いの中、読者に明かされるのは主人公たちがいる世界がすでに地球ではないこと、本当の脅威はある意外な人物の策略であることが明かされるが結末は原作では物足りなさが残る。そして、それを補完してくれるのがアニメ映画「あいつむぐほし」である。わたしは何度も泣いた。

「人形の国」では人間と機械の境界は不明瞭だ。人は古代文明の遺跡である変容したパイプの実などを食べている。そして、時に「人形病」を発症し機械の屑のように死んでゆく。一方で政府は「正規人形」という人間であり機械生命体である存在によって人々を管理、圧制をしいていた…。ネタバレになるので詳しくは書けないが非常に残酷なシーンが多い。ラストシーンには疑問も残るが是非アニメ化してほしい作品でもある。


  • ちくちく

    ちくちく

    2023/06/10 10:49:31

    独創性のある作家さんだねぇ。素敵な世界観!!

  • ももすけ

    ももすけ

    2023/06/10 09:57:27

    「BLAME! THE ANTHOLOGY」だけ読んだ事があります(弐瓶勉の作品でなくてごめんなさい)
    コミックは南海そうで 手を出せていません

    あの世界観を映画化出来るんですね。