美味しい生活 第3章
彼は目覚めた
窓から朝日がさしていた
会社に行かなければ という考えは 1/2秒で消せた
そうか~ もう行かなくていいんだ
僕は昨日で会社を辞めたんだ
さて どうしよう
南部煎兵衛は しばし布団の上で考え耽った
頭の中はグルングルンまわっていた
それは昨夜のウィスキーの余韻のせいではなく
腹が空いていたので なにか食べたいとひたすら感じたからだ
着替えて 身づくろいして部屋を出た 最低限の小銭入れをポケットに入れて
アパートの前の通りに出た
ここは商店街である
右に行っても左に行ってもしばらく商店街が続く
そういえば不動屋さんのおばさんが言っていたっけ
「ここは買い物にも食べ物にも便利ですよ」
そうやって今の大家さんに紹介された
ふと思い出した
『あ 昨日の素麺 美味しかったな』
いつまでもここに居られるわけじゃない(金がない)
さて どこで腹の虫をおさめようか しょうがなく歩を進めた
次の瞬間 目の前が
さっき見た窓ガラス越しの朝日の百倍くらい輝いた いや 煌めいた
『僕はこの商店街を知らなければならない
それじゃなかったら 一体何のための辞表だ』
南部煎兵衛は再び歩み出した
それは自らの空腹を満たすためだけではなく
頭の中にあるキラウエア火山の溶岩流を
この商店街に流し込められるのだろうか
そんなことができるのだろうか その一点だけだった
永遠に続きそうなので ここでおわりとします
続きません
気が向いたら まあ そんときはそんときで