【お話】この海の底から、歌を贈ろう。
この海の底から、歌を贈ろう。懐かしい、思い出のメロディを。
もらったステキコーデ♪:21
君は、覚えているだろうか。
はるか昔、ほんの少し前。
波とたわむれ、海の音楽を聞いた。
夜明けの空に、風と光の歌を見た。
きらめく星と、明るくなる空。
くじらの潮を吹く音と、イルカの笑い声。
通り過ぎる風の響きと、さんごの森をくぐりぬける、魚たちのおしゃべり。
ほんのすこし昔、はるかずっと前。
空は、海は。世界は音楽に満ちているんだと、いっしょに笑いあった。
きらめきは、歌。つぶやきは、光。
なんてすてき、なんて楽しいのだろうと、泳ぎ、飛び跳ねた。
覚えているだろうか。もう、忘れてしまっただろうか。
君がいなくなってから、
ぼくは、夜明けの来るたびに、
波が、踊るようにゆれるたびに、
君の笑い声と、後ろ姿を探している。
青い、青い、世界の中で。
遠く、遠く、空から離れて。
思い出は、今もぼくと共にあって、
天空は、はるか彼方。
空の娘よ。大気の娘よ。
君と出会った時間を、忘れたくないから、
歌を贈ろう。
君がすてきだと言って笑った、
海の音楽を。この海の底から。
***
天空の娘と、海の王子のつかの間の出会い。