私が学校の行事で２番目に嫌いだったのが運動会だ。対して運動神経も良くない子供であれば嫌でも分かる、あの『今日の主役は自分じゃない』という感覚がとても苦手だった。よく知らない友人と二人っきりになったような、遠い親戚の家に行ったときのような、そんな気まずさを感じていたと思う。

小学校や中学校の頃はまだ良かった。団長やリーダーに立候補できるカースト上位の人間は自分とは違う人種であることを気まずさの理由にできたから。問題は高校に入学してからだった。
高校にもなると学内カップルなんてものは当たり前にいて、なんなら先輩と付き合っているクラスメイトや他校に恋人がいる子がワラワラと出てきて、同じ年月を生きてきた人間しかいないはずなのにどうすればこんなに差が出来るのかと考えていた。

運動会というのは、学年の枠を超えて交流する行事であることから、そういう『一歩先にいる子たち』が目立てるばしょであったのだ。
リレーに彼氏が出ていれば応援する彼女を応援するような女の子たちに、彼女がリーダーで可愛い格好をすれば彼氏にヒューヒューと口笛を鳴らす男の子たち。なんなら公開告白やお姫様抱っこで写真を撮るなんてこともあったな。私は全てその輪の外にいて、彼や彼女たちの物語のモブとして立派に背景をやっていた。

砂だらけの体操服も汚れた膝小僧もあの子達と同じはずなのに、私は何でこんなに薄汚れたモブとして生きているのだろう。そう思いながら過ごす運動会は、ちっとも楽しくなんてなかった。
今の私がタイムマシンに乗って過去に戻ったとしても、きっとあのキラキラした青春物語の名有りキャラクターにはなれないのだ。

砂に塗れた体操服も汚れた膝小僧も、全てスパンコールに見えるくらいの綺麗で甘酸っぱい青春でいたかったなぁ。まあ、もう無理なんですが。

#運動会の思い出は？