もえーん

雨が止んだら その2

日記

ホテルに戻りながら、改めて缶ビールと、缶ハイボール、そして珍しくアイスクリームなどを調達。部屋でテレビをボンヤリと見ながら過ごしているが、一向に眠くならない。気が付けば、もう4時になっていた。このまま徹夜と言うわけにもいかず、無理やりに何とか眠り、次に目が覚めれば7時半だった。

3時間半では十分に寝たとは言えないが、帰りながらの寄り道を考えれば、ゆっくりもしていられない。窓から外を見れば、路面は濡れて入るものの、すでに雨はすっかり止んでいる。
とりあえず、冷えた風呂の湯を抜き、改めて熱い湯を張る。朝風呂で目を覚まし、さっと着替えてフロントに向かう。フロントの前に小さな喫茶スペースがあり、そこでパンとコーヒーのモーニングサービスがあるので、ありがたく頂く。

ホテルを出ると、バイクを置いていた駐車場へ。
バイク置き場が用意されているわけではないが、ちょうど非常階段の下にバイクを駐輪できていたので、それほど濡れていない。タオルで軽く拭き上げ、エンジンに火を入れる。

それほど寒くもなく、青く澄んだ空が広がる。
いい朝だ。

下田を後にして、まずは動物園へ。
爬虫類だけを扱う動物園。両生類すらいない。
イグアナが多い気がするがな。。
絶滅危惧種も多く、ここで繁殖を進めているものも多いようだが、小さな小さな箱に閉じ込められた彼らの姿は、やはり悲しくもある。
放し飼いになっているゾウガメを撫でながら、展示場を後にする。
併設のショップで、可愛らしい水彩画の爬虫類ポストカードを購入。
ちなみに、ゾウガメの甲羅以外の部分は、実は結構やわらかい。

次は、まあこれは施設名を出さないと説明のしようがない気がするので記すが、「怪しい少年少女博物館」と、その系列施設である「まぼろし博覧会」。
以前より行ってみたかったのだが、念願がかなっての初訪問。

詳細は公式サイトなどを見て頂ければ良いかと思うが、一言で言えば秘宝館の一種とも言える。でも必ずしもそういうものでもなく、そこまで下世話なものというよりは、忘れられ打ち捨てられ目を背けられていく物たちへの挽歌のような場所なのかもしれない。

展示そのものは、こういう世界観に長年に渡って慣れ親しんでいる身としては、別にどうということもない。まあ一般的には目が点になるのかもしれないとは思うが。。。
しかしそんなことより、オーナーである通称セーラちゃんと呼ばれる年齢不詳(おそらく私よりも少し上、50代後半から60くらい?)の男性。この人のインタビューなどをWebで検索して読むと、その潔さに平伏する。

やれない言い訳をするのではなく、自分が信じるべきことを信じ、そして実際にやった者だけが正しい。やったもの勝ち。

当然の道理。

うだつが上がらぬまま人生を終えていくであろう私にとっては、ある意味で眩しい存在かもしれない。
帰り際、彼(彼女)と一緒にツーショット写真を撮ってもらう。
バイクにまたがり駐車場を出ようとする私を、道路際まで出てきてちぎれんばかりに手を振って送りだす。私だけではない。帰っていく客、漏らさず全員におなじように見送りをする。
馬鹿にするのは容易い。
だけれども、正直に生きるという事にプロフェッショナルであろうとすれば、これが一つの姿なのだろう。

羨ましい。

本当は、最後に小さな天文台に立ち寄りたかったのだが、これ以上遅くなると、帰宅が夜中になってしまう。諦めて帰途に着く。

復路は海沿いの国道を使わずに、これもまた一度は走りたかった伊豆スカイラインに初めて足を踏み入れた。海岸線のリアス式海岸に依るワインディングではなく、一変してよくある山間部のワインディングだが、そこまでヘアピン並みにRのキツいコーナーはなく、なにしろ有料道路だから信号もない。
あまり飛ばすつもりはなかったが、やはりもう一つ調子の上がってこない我が駄馬のエンジンも、高回転まで回せば奮起して地面を蹴ってくれるので、ちょっとばかりスロットルを開け気味に。

何処までもコーナーの続く道を、ヒラヒラとバイクを傾けながら走っていくと、なんだか自分が浮いているような気がしてくる。やはり車とは違うよな。



そして、19時少し過ぎに帰宅。
荷物を自室に置くと、10時間の道程などなかったかのように、さっそく夕食の準備に取り掛かる。20時ごろに、少し遅い家族との夕食。

またいつも通りの日常に戻る。

雨上がりの同じ空でつながった星空の下で、いまごろセーラちゃんは何をしているのだろうか。

彼に、少し憧れてしまう自分がいる。
またいずれ、そう遠くない未来に、また出向こう。

人それぞれ。

前を向いて、歩こう。