プレゼント
所要があり、首都圏に出かけていた妻が帰ってきた。彼女の仕事は、著実業。産まれたてのクリを、家族の一員として、知人宅から招き入れたのは、妻である。元来、犬嫌だった(幼児体験)私が、仕方がなく、認めた経緯がある。
妻の姿を確認したクリは、再会の歓びを表情に出し、体の全身を使って確認しているようだ。妻が、問い掛ける。(元気にしてた?。寂しくなかった?)。クリの返答。<寂しくなかったよ。時々、キタキツネの親子が来てくれて、楽しく遊んでいたから>。妻は、(それは良かったネ)と。愛犬の首周りを優しく撫ぜている。
妻は、愛犬へのプレゼントを、カバンから取り出す。クリの大好きな色である、オレンジ色の小型の敷物。夜間はその中で過ごす、ゲージに敷いてあげる。クリは、中に入って、その敷物の上にチョコンと座り、大いに満足気な様子。
<ありがとう。良く、私の好みのカラーを選んでくれました。素敵な色合いですね。夜間は、グッスリと安眠できそうです>。愛犬の大満足の表情から発せられる言葉を聞き、妻も(良かったね、ヨカッタネ)と、語り掛けている。
妻が、帰宅したのを見計ったように、空の奥底から、雪の精達が舞い降り始めた。妻と私は、ログハウスの窓から、更に、白色に染まりゆく景色を眺める。そこには、天空に大きく両手を拡げて、雪ん子達を、<コッチへおいで。よく降りてきたね>と、優しげに手招きしている、老エゾマツの、ドッシリとした勇姿があった。