モリバランノスケ

マングローブの森

日記

今日は、いつになく、波が穏やかである。私はカヤックを、倉庫から取り出す。半年ぶりに使うので、傷んでいるところは無いかと、入念に点検した。大丈夫のようである。そして、白いサンゴ礁の上を海岸まで運び、渚に浮かべた。

ろを使って、少しづつに海へと漕ぎ出す。沖合へは出ない。海岸線から、それ程離れずに、サンゴ礁の浅瀬を行く。カヤックの周りを群れ遊ぶ極彩色の魚達。シュノ−ケリングを使い、彼等とユッタリ戯れるのが、私の流儀だ。目を閉じると、浜辺に打ち寄せる波の音だけが、聴こえる。静寂に包まれた、歓喜に満たされる瞬間。

少し進むと、小さな入江がある。そこの奥までカヤックを漕ぎ入れ、碇を下ろした。そして、僅かな砂浜に上陸し一息入れる。それは、私の密かな楽しみ。中でも一番は、マングローブの樹木達との再開。愉しい会話を交わすことだ。

辺りの森は、東南アジアの大規模なマングローブとは比較にはならないが、小さいながら群落を創っている。白と赤の美しく可憐な花々が、ちょうど見頃である。名前は何というのだろうか?。樹木に絡み付いているようにも見える。寄生植物だろうか?。私は、イヤマテヨ、これは共生植物ではないだろうか、と、言い直す。

森の主とも言える、相当な樹齢の大木が在る。彼と話す事。それが、ここを訪ねる、目的であり、又、楽しみでもある。私は、親しみを込めて(ご無沙汰してました。お元気でしたか?)と、言葉を掛けた。彼も、<元気でしたよ。貴方はどう?>と、返してくれる。親密で深い会話のキャッチボールが、辺りに木霊していた。