涙の訳は、誰も知らない
ここ2週間ほど続いた忙しさも、昨日で一段落。やっとニコタにINでございます。
ご無沙汰しております。
でもって、予告の日記はまたも延期して、最近の話など。
昨年の春ごろ、とある知り合いからこんな話をされました。
「あのね、レオ・ヌッチが日本に来ることになったの」
レオ・ヌッチ
ご存じでしょうか。
わたしもオペラはそれほど聞いてきませんでした。
ですから知ったようなことは何も言えないのですが、まさに生きるレジェンドです。日本では、パバロッティなどのようにメディアが持ち上げてイベント的に盛り上げたことがないので、一般的な知名度は皆無ではないかと思います。でも、長きに渡りオペラ界のスーパースターとして、バリトンの歌声を世界中で響かせてきた人です。
数年前に日本公演が予定されていたのですが、コロナで中止。
歳も歳ですから、もう日本では見られないのではないかと言われていたようです。
ところが。
冒頭の通りの話が耳に入りました。
この時点では、ヌッチの来日はまだ情報がオープンになってはいなかったのですが、話をしてくれた人自身が、今回の来日のキーマン中のキーマンなので、ポソッと耳に入ってしまいました。
そして昨年の10月に入った頃、チケットの発売が開始されました。
「どうする? 行く? 行くなら、席を押さえるけど」
勿論二つ返事です。
ご招待ではありませんが、そんなものはご招待で行くようなものではありません。自分でお金を払って行ってこそです。とは言え、安くはないチケット。
ちょっと迷いはしましたが、ここはS席を頼むしかありません。おそらく、これが日本で見られる最後の機会、子供たちにも見させておきたい。ということで、家族の分もお願いしました。計4枚で、10万円です。いや、全然高くない。行くしかない。
そして本日。
サントリーホールへ出向いてまいりました。
とんでもない席でした。
もちろん事前に席は分かっていますが、実際に会場に出向いてみれば、これは。。。 と唸るような席。少々前すぎとはいえ、5列目のど真ん中。
懸念は、わたくしの膀胱。
会場に入る前に、近隣のレストランで食事をしたのですが、うっかりコーヒー一杯と、子供の残した紅茶など飲んでしまいました。頻尿大王の私としては、レストランで2回。会場でも2回の放尿にて万全を期しましたが、最初はもう膀胱の具合が気がかりで貧血になりそうでしたよ。。
しかし始まってしまえば。
御年82歳。
どこからこの声が響き渡るのか。
なにがなんだかわかりませんが、涙が出てしまいました。
自分でも、どうして泣いたのか分かりません。
ただ、ぽつりぽつりと涙が出るのです。
素晴らしいとはいえ、老いたその声に、かつてを知る人は拍手喝采ではないのかもしれません。それでもわたしは、一通りの演目を終えたその時、スタンディングオベーションをするしかありませんでした。
そしてアンコール。
今回はヴェルディ中心の演目ですが、一曲目は十八番の「リゴレット」
二曲目は私にはなじみのない曲ですが、ジョルダーノの「アンドレア・シェニエ」からの曲。このアンコールが、また素晴らしくよかった。正規の演目より、個人的にはこちらが良かったかもと思うくらい。
満場のスタンディングオベーション。
長く長く続く拍手。
観客の退場を促すために、最後は会場の明かりがフル点灯となり、それでもしばしのカーテンコール。
ホールを出てロビーに出てしばらくした頃、私にこの公演の事を教えてくれた件の方からから二度も電話があったのですが、気が付かず。公演が始まる前に、ロビーですれ違って会釈程度の挨拶はしたのだけれど(向こうは関係者ですから、忙しく歩き回っているのでサラッと挨拶)、何だったのだろう。マメな人だからな。悪いことしたな。。。 お礼のメッセージだけ送っておきました。
ああ、しかし良かったな。
至福の時でした。
ところが。
帰宅してしばらくすると、実家の父からの電話が鳴り、叔父(死んだ母親の弟)が急死したとの連絡。明後日が葬儀のようなので、早朝に家を出て山梨まで出向きます。
つい数日前も、マラソンチームの仲間がやはり急死し(まさにマラソン大会の最中、ゴール目前で心臓発作を起こしてそのままでした)、通夜に出向いたばかり。思い入れのあった人なので、ボロボロと泣いてしまいました。
良いことやら悪いことやらで、泣いてばかりのこの頃です。
ではまた。