「いますぐここに流れ星」
祈るという行為の残酷さに、大人になってから漸く私は気付いた。
一人で来る夜の海は昼とはうって変わって黒く禍々しく、ここが何度も訪れた優しい思い出の場所とは到底思えない。対岸には人口の明りがまばらに涙のように小さく煌めいた。
昔、私の大切な人は度々ここに足を運んだ。真夜中、一緒に流星群を見に来たこともあるが、轟く潮に今みたいな不気味さを感じはしなかった。どこか温かく幸せに満ちた夜気は貴方のおかげ。知ってて失くしてしまった。
あの過去の日、私は尾を引く星に無邪気に願った。「ずっと一緒にいられますように」と。それが彼を傷つけるなんて微塵も思わず。
あの人は知っていたのだ。私の、遠い頭上の流れ星を通してすぐ真横の人に押し付けた祈りが不可能だと。視線を空に盗み見た曖昧なほほ笑みは、永遠の別れを確信してのものだった。
ずっと辛かったはずだ。叶えられるのは自分しかいない祈りを抱えるだけで捨てられないでいたのは。無自覚の内に追い詰めてしまった。
だから、今日は罪滅ぼしに来た。あの星に、次は君のありったけの幸せを祈るから、どうか許して。
涙が一筋、流れ星のように一瞬輝き消えた。
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昔々、新聞部とコラボした時に書きました。
紙幅の都合で文字制限が厳しく起承転結のない散文に……これはいつもか。
ヨネ
2024/02/17 23:59:06
vinylさん>
読んでくださりありがとうございます!
初めての試みでやはり文字数がネックだったので、
悩みに悩み締切当日に提出して迷惑と心配を新聞部にかけたのを覚えてます(笑)。
でも今となっては書きたい光景や表現はちゃんと収めたので、
制限を取っ払って書き直そうとしてもこれ以上の文字数に増やせそうにないです。不思議~。
vinyl
2024/02/17 21:09:26
この作品は別サイトでも拝読させていただきました。制限がある中でもきちんとしめられていて素敵だなと思います。
私は何かを作ったことも、作るように頼まれたこともないのですが、依頼があっての作品は制限がつきまといそうですね。そういった制限のない中での表現なら、ヨネさんはどう書いたのかな、と思いました。