モリバランノスケ

回復

日記

再びお蝶が、老クスノキに語り掛けた。

お蝶 (少年が完治したのは、何時ですか?)
老楠 (そうだなあ。翌年の春だった、と思う)

老クスノキは、昔を懐かしむように語りだす。

少年は、森の皆んなから、心からの手厚い看護を受け、日に日に、心と身体の健康を回復していった。翌春には、タローとジローを伴って、森の中を散策し、活発に動き回る事が出来るようになった。

勿論、常に、追手の目を警戒してのことだが。安全に過ごせたのは、森の皆んなの協力があり、警備体制が出来ていたからだ。そんなある日のこと、タローから、とある相談が持ち込まれた。

老楠 (彼は、スッカリ元気を取り戻した様だ)
タロ (体の方はもう完全です。そして、心も、
   大丈夫です。何故ならば、我々との会話
   に何の支障もなく、ス厶ーズだから)
老楠 (それは何よりだ。我々命あるもの同士
   自由に話ができる。それが、心が健康で
   あることのバロメーターだ。良かった)
タロ (所で、折り入って相談が有るのですが)
老楠 (私も、そろそろと、考えていたよ)

○タローの相談内容○

私は、あの少年が、どういう素性の者なのか、詳しくは知らない。けれども、この土地に住む武士連中が、血眼になって探しているところから判断すると、源氏の血筋をひく君ではないかと、考えている。

周りは、時代を反映してか、平家一色である。貴方(老クスノキ)は、長く生きて来られて、色々な事を経験されている。のであれば、人脈も深く広いであろう。貴方の知り合いに、少年の力になってくれる人物は居ないだろうか?。