琉馨

ずっとずっと 二

自作小説


「なんで!」

気づいたときには声を荒げていた。そんなことをしても彼が好きになるわけがないと知っていながら。

 すると彼は張り付いた笑顔から、軽蔑の眼差しに変えていった。

「なんで僕のことを知らないのに軽々しく好きだ、とかいえるわけ?」

・・・え?

私は彼の好みの女子から身長、交友関係に家柄まで全部知ってて仲のいい、今隣りにいる男子のときにしか見せない笑顔も全て知ってるのに。

戸惑い、苛立ち、困惑。

様々な気持ちが飲み込もうとしてくる。

彼を見上げると、思わず息を呑んだ。

彼の瞳には、「軽蔑」なんて軽い気持ちじゃなかった。そこにあったのは悲しみ、傷つき、憎しみ。

「ち!違う!あなたのことは去年の文化祭で一目惚れしたんです!そこから・・・あなたと結ばれる日を夢見て!努力して、調べて!」

「じゃあ何を知ってる?」

「昔付き合っていた女子の容姿、身長、交友関係、家柄、全部調べたの。」

彼の隣の男子は呆れたような、彼を気遣うような表情をしていた。
それでいて何も言わないことが、彼への信頼のように思えて・・。歯を食いしばった。

「で?僕についてなにか分かった?」

でもやっぱり降ってきたのは冷たい言葉だった。

「え?・・・今言ったことでしょう?」

「僕個人についてなにか知ってるかって聞いてるんだけど?昔付き合っていた女子?そんなものいない。どうせデマ。身長?家柄?交友関係?それって僕の見た目だよね?」

そう言うと彼は鼻で笑うと私の耳下まで顔を近づけていった。

「ここまで言うのも親切な方だからありがたく聞いてね。僕っていう人間を、所詮君はお飾りにしたかっただけだよね。」

「そんなことない!」

あのキラキラした笑顔に私は惚れたんだ。

「違わない。君は美しい僕、の隣に歩く特別な存在である自分、になりたかっただけだ。」

そう自分で「美しい」と言うと自己陶酔のようにも聞こえるのに、彼が言うとコンプレックスのように聞こえた。

・・・衝撃だった。私が酔いしれていたのは、彼じゃない。彼の隣りにいる自分が欲しかったんだ。

「やっと気づいたんだ?いい?これで八つ当たりのように僕の周りに手を出したら許さないからね?」

顔を上げると、彼の瞳は真っ黒だった。それは闇のように私を吸い込もうとしていた。隣の彼も、憎しみでいっぱいだった。

私は、告白することで相手も傷つけることを知った。

その記憶はずっとずっと、私の心に残っていった。

  • ちぃ

    ちぃ

    2024/02/18 11:19:22

    彼の発言が刺さりますね…展開はどうなっていくのでしょうか?楽しみです(*´ω`)