モリバランノスケ

時代

日記

熱弁を振るった為であろう。老クスノキは、(少し、休ませて欲しい)と、皆に向かって、一言。
周りで話を聞いていた者たちは、彼の樹齢を考慮してか、(良いですよ)と、言いたげに、顔を見合わせて、うなずき合っている。

皆の周りを、爽やかな風が、サァーっと通り抜ける。少し離れた場所に、桜と梅の巨木。桜は未だだが、梅は満開を迎えた。メジロの夫婦が、花から花へ、飛びまわる。時々、花弁が、ハラハラと舞う。皆も、のんびりとした気分で風景に溶け込み、夫々に楽しんでいる。

そんな中で、お蝶が老クスノキに話し掛ける。

お蝶 (千葉一族の頭領が、何時、少年を救出に
   きたのですか?)
老楠 (翌々日だった。)
お蝶 (そんなに速く!。誰が知らせたの?)
老楠 (それは大鷹だ。彼の行動範囲は広くて、
   その行動力とスピードは、素早いから)

千葉一族の頭領❲千葉常胤)が、この森に姿を見せたときの光景は、ハッキリと目に焼付き、私にとって、一生忘れる事は無いだろう。その時、
一点の曇もない、晴天吉日だった。そこの桜が
事を祝うかのように見事に満開を演じていた。

常胤 (ご無沙汰しております。)
老楠 (立派になられた。わしは嬉しいぞ!)

常胤は、愛馬に乗り、また、屈強な野馬が5頭周りを固めていた。そして、それらを引率するかのように、一頭のオオカミが。昨日、常胤は少年時代、この森が大好きで、良く滞在し遊んだ話をしたが、その時、狼の産まれたての3匹の赤子がいた。タロー、ジロー、サブローだ。
常胤は、赤子達を可愛がり、彼等も彼に懐く。特に、サブローは。それが、引率オオカミだ。

この森で、身と心を癒やし、見事に回復した少年と常胤との出会いの場面。これも、私には、一生忘れることのできない、シーンになった。

(源頼朝様!。千葉常胤は、こうして、お迎えに参りました。本日は、私にとって、我が人生にとって、いや、日の本にとっても、もう二度と無いであろう、最良の日でありましょう。殿には我が館で暫し静養いただいた後、鎌倉へ上り、幕府を再興して頂きたい。その目的の為には、千葉常胤は、身命を掛け、かならずや、殿を、御守り、お救け致しますことを、ここに誓います。)

源頼朝は、千葉常胤の誓いを聴きながら、満面の笑みをたたえて、頷くのだった。

☆☆☆☆☆宜しく頼む☆☆☆☆☆