なるべく気楽に気楽に~!

紫音-sioto

精神的な疾患を持ってる私の気楽に気楽に生きたい願望です~!
ちょこちょこ愚痴も入りますが、嫌な思いをされる方がいたらすみません><

柔くしなやかな月の下で

自作小説

第三章

金曜の朝、私は昨日の疲れもあり、ぐっすりと眠ってしまっていた。
アラームが鳴り続ける中で、ぼんやりと何かの音がする…。
私は、人の気配を感じ取り「そうだった」と昨日リム君を泊めた事を思い出したのだ。
私はぼんやりしていた頭からサッと目覚め、寝室からそっとリビングを覗き、
「リム君…何してるんだろう」と彼の動きをじっと見つめていた。
そんな私に彼は気付いた様子で、「すずさん!おはようございます!」と
キッチンで何かをしている様子だった。
「おはよう…リム君、何してるの?」
「あ、えっと失礼かとは思ったのですが、朝食を作らせて貰ってます」
「え…」私は驚き、冷蔵庫には何もなかった筈。
「あ…冷蔵庫…見た?」と少しばかり女性としての一人暮らしじゃないよなぁ、なんて
恥ずかしくもあり、ずっと一人暮らし生活だった私には少しばかりハードルが高い疑問を
投げかけていた。
「いえ!冷蔵庫は見てないです!食材を買って来たので少し調理道具はお借りしましたが…」
安堵する私を見て、ケラケラと笑う彼に「何笑ってるの」なんて事を言い私まで
笑う朝を迎えていた。
ひとしきり二人で笑い合った後、「昨日は良く眠れた?」私は彼へと問う。
「はい!ぐっすりです!元気満タン!」と笑顔で応えてくれた彼に「あはは」と私は笑った。
なんて平和な朝なんだろう…そんな風にも感じ取れた私は寝室から出て、
キッチンへと向かい、「何を作ってくれたの?」と聞いてみた。
「簡単なものなんですが、サンドイッチを…」と照れた様に笑う彼に私は
「凄いね、リム君!」なんて事を言いながら、人が居ると心が落ち付くんだなぁ、と
しみじみと一人考えていた。
「ありがとう、朝食作ってくれるとは思ってなかったよ」
「いえいえ、感謝するのは僕の方なんで…そろそろ出来るんで洗顔でもしちゃって下さい」
彼はそう言って私のペースに合わせてくれている様にも感じた。
私は洗面所へと向かい、顔を洗い歯磨きも済ませた。
「さて、今日も仕事だ、頑張れ私」と鏡の中の私へといつもの様に呟いた。
ふと時計を見ると、出社時間が迫っている事に私は慌て、
リビングへと戻り、薬を飲みながら「リム君、ごめん!そろそろ会社に行かなきゃ」と
朝に人と会話する事のない私の日常に「リム君」という「存在」が居た事を思い出し、
朝の会話が手間取ったのだと、気付いた。
彼は私の慌て様に驚き、「あぁ、それじゃあこれ…」と言って、何かを探し始めた。
私は急いで寝室へと戻りスーツへと身を包み、「何を探しているの?」と聞く。
壁越しに彼は「ハンカチか何かを…」と、答えていた。
「ちょっと待ってね」と一言掛け、私はメイクルームへと急ぐ。
ハンカチを探している時間等なかったが、今日はメイクもさっと済ませようと思い立ち、
「ハンカチね…」と確かここにあった筈の場所を探す。
「見つけた…」数分は探し回ってしまった。
メイクルームへと彼を招き入れ、「ハンカチここにあるから、好きなの選んで」
そう伝え、私は軽くメイクをし始めた。
彼はそそくさと「ありがとうございます」そう言って、一枚のハンカチを持って
メイクルームから出て行った。
私はメイクをさっと済ませ、リビングへ出て出勤用のバッグへとメイクポーチを入れ、
「私、仕事行ってくるから、リム君ここに居てね」
そう言って慌てている私へと、彼は「あ、これお昼にでも食べて下さい」
そう言い、綺麗にハンカチに包まれたサンドイッチを渡してくれた。
私は慌てながらも、少し呼吸を整え「ありがとう、ごめんね?一緒に食べられなくて」
彼へと感謝と謝罪を込めて言葉を紡いだ。
「いえ…全然、昨日も僕のせいで遅かったですし…」
少しだけ落ち着いて、「そんな事ないよ、帰ったらまた話そうね?サンドイッチお昼に頂くね」
「仕事行ってくるね」…「はい!お気を付けて!いってらっしゃいです!」
彼は笑顔で私を見送ってくれた。
私は「行ってきます!」と慌ただしく部屋を後にした。
いつも通る出社への道、歩道橋、満員電車。
今日は何だか気分が良い、そんな風にも思えた朝だった。
慌ただしかったが、私は無事に出勤時間前には会社に着いていた。
そうだ、と私は煙草を吸っていなかった事を思い出し、
会社の中の喫煙所へと向かい、煙草を吸って軽めの香水を纏って
今日と言う一日に何事もなくすんなりと帰れると良いな、なんて思いに耽っていた。