小説『骨を彩る』
彩瀬まる 著
『骨を彩る』を読みました。
同作者の小説で
東日本大震災をテーマにした
『やがて海へと届く』を以前読んで
文章が私の感覚にしっくりきたのを
最近になって思い出し
本書を選んでみました。
シングルファーザーである不動産屋社長
彼が足繫く通う弁当屋の娘
彼女のかつてのクラスメイト
彼女が旅先で出会った薬科大学生のゲーム友達
彼の上司(不動産屋社長)の娘
5人各々の心模様を描く連作短編集。
彼らは「喪失」を抱えています。
それは骨の中に染み込んでいて
何かのきっかけで表面に現れては
ぐずぐずと疼いて
彼らを苦しめます。
けれどそのような痛みを抱えつつも
移ろいゆく日々の中で
人にやさしく接し
人のやさしさに触れることで
気付きを得て
恩寵のような自然の美しさにも癒され
半歩か一歩を踏み出していきます。
モノクロだった骨が
徐々に色を帯びていくのです。
最終話『やわらかい骨』では
幼いころに母を亡くした女子中学生が
転校してきたいわゆる宗教二世の女子と
隣のクラスの純真実直な男子との交流を通じて
今まで避けてきた
「母の不在」について向き合います。
ああ 青春だなぁ と感嘆。
『百年の孤独』のような
ワイルドだろぉ的な本を読んだ後では
より瑞々しさが
じわんじわんと沁みたのでした。
センチメンタルに溺れず
かと言ってドライでもなく
凛としつつも
寄り添うような暖かみを感じさえる内面描写。
彩瀬さんの文章
やっぱり好きだなぁ。
スターダスト
2024/09/22 07:08:07
僕も彩瀬まるさんの小説は何冊か読みました。↑の本も読んだけど、内容をあまり覚えてないです…『朝が来るまでそばにいる』が僕のお気に入りです。
たまねぎ
2024/09/21 19:40:03
『百年の孤独』とは真逆の物語なのですねw
感動が深まるという点でも、『百年の孤独』が果たした役割は大きいかもしれませんね。
登場人物の接点が、ぐるっとつながるのが面白い。
物語の中でも相互の関わりがあるのかしら。
自分の好みに合う文章を読むと、幸せを感じますね!