なるべく気楽に気楽に~!

紫音-sioto

精神的な疾患を持ってる私の気楽に気楽に生きたい願望です~!
ちょこちょこ愚痴も入りますが、嫌な思いをされる方がいたらすみません><

深淵の中の蝶

自作小説

第十章

部屋の中はとても柔らかい光で包まれていた。…今日はどんな風に過ごしたのだろう…ふとそんな事が頭を過った私に対し、彼は「…人の体温って良いっすね…」彼はそんな言葉を呟いていた。「そうですね…あったかいですよね、人肌って言うんでしょうか…」…「突然抱き締めちゃって…すんませんでした…怖くなかったっすか?」…「いえ…全然大丈夫でした…何だか不思議なんですけど、悠さんに対して、恐怖心?みたいなのが無いんですよね…ふふ、変ですよね…」…「そうなんすね…ははは、でもありがたいっす、そう言って貰えると」…「何か飲みたい物ってあります?」…「あ、白湯を頂ければ…」…「了解っす、適当に座ってて下さいよ」…「ありがとうございます…」…「由佳里さんお手製の卵焼き、食いましょう」…「はい」そんな会話が始まりつつある中、私は彼の大事な恋人さんの写真が見える場所へと腰を下ろした。「…あの、こんな事聞いて良いのか分からないんですけど…」…「?ん?どうしました?」…「あーいえ…なんと言うか…今日はどんな風に過ごされていたんですか…?」…「あー…なんかすげーぼーっとして過ごしてた気がしますね…」出来上がった白湯と箸を差し出されながら彼は私の目の前に座った。彼と恋人さんの写真が重なる…素敵なカップルだな、と二人を眺めていた。「あ…ありがとうございます」…「卵焼き、旨そうっすね…一緒に食べれそうっすか?」…「あ、はい一緒に食べましょう」手を合わせて「頂きます」と言ってくれたそんな彼の言動や仕草を見て、私はなんだか嬉しくなってしまった。
4つに切り分けていた卵焼きの1つを彼は口にした。私は少しだけ、彼を見つめる様に、「…お口に合いましたかね…」…「すげー俺好みの味付けっすね、旨いっす」…「良かった…」ほっとした私はつい、敬語を使わなくなっていた。
「由佳里さん、すげー気ぃ遣う人でしょ、はは」…「…え?」唐突に私に投げかけられた言葉に戸惑いながら、「どうして…?」…「多分俺の方が年下なのに、敬語使って話してるし、きっと気ぃ遣ってんだろーなって、はは」…「あはは、そうかもしれませんね」…「ほら、また敬語…ははは」なんでもない会話の中から、二人して笑っていた。「そんな気ぃ遣う事ないっすよ、普通に話してくださいよ、その方が良いっす」…「そ、そうかな…?」少しばかり緊張しながら、私は言葉を紡いだ。「俺、美容師してるんすよ、だからなんつーか…普通に話してくれた方が気が楽というか…なんか分かります?」…「あーなるほど、何となくですけど、分かる気がする…」卵焼きをもう一切れ口へと運びながら、彼は「マジで旨いっすね、由佳里さんの卵焼き」…「あはは、良かった」そんな彼を見ていた私も一切れの卵焼きを食べてみる事にした。「…いつから、お仕事なの?」ほんの少しの沈黙の後「…心の中の整理がついたら、職場復帰しようと思ってるんすけどね…なかなか心の整理がつかないんで…でも、こんな風に由佳里さんと話してると、落ち着くっつーのかな…安心するんすよね、だから職場復帰も近々かなと、思ったりしてます」…「そう…ですか、もし私が悠さんの力になれる事があれば、何でも言って下さいね」私は、ありきたりな様な言葉を発していた。…それでも、どうしても伝えたかったのかもしれない。「ありがとうございます」そう言ってくれる彼に対し、好意を抱く迄に時間は掛からなかった。