幸せは物質…?
各論①「ドーパミン」
脳を覚醒させ、生産性の向上や達成感をもたらすと言われるドーパミン。その神経細胞は学習や動機形成(いわゆる、“やる気”)、睡眠など多くの行動制御に関わるほか、予測される期待値との差(期待していたほどの結果ではなかったというような差)を表現できることも近年の研究で徐々に分かってきました。
この刺激には2種類あり、ひとつは嗅覚や視覚など五感による刺激のほか、感情や求愛など本能的な行動によって起こる一過的な「外的刺激」。もう1つは睡眠欲や食欲、性欲といった脳内で常に起こっている持続的な「内的刺激」です。このうち、「外的刺激」は報酬系の刺激とも呼ばれてバースト発火※を特徴とするのに対し、「内的刺激」は神経の自発的な活動によるもので「外的刺激」のような激しい特徴は見られません。
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報酬系の刺激には過反応をしがちですね。
幸せ物質だからといって、目の前に飛びつき過ぎるのは、要注意ですよ…!
体調悪い時は特に、まわりの人からすると、わやくちゃなナニカを羨望しているのかしらというヘンテコな人にみえてさらに遠退かれます…笑
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中枢では運動機能や認知機能、報酬と嫌悪、神経内分泌や視覚に加え、脳の覚醒や睡眠、記憶学習、動機形成(やる気)などあらゆる行動を左右する物質として重要です。例えば、ドーパミン作動性神経が壊れていくために発症するパーキンソン病では、運動機能や認知機能に支障を来たすことが分かっています。
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また、人が薬物やギャンブルに依存して段々と衝動性が高まっていくのは、ドーパミン神経細胞における情報伝達の乱れが要因の1つと考えられているため、これらの研究成果は社会的にも寄与する可能性が高いと期待されています。
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ドーパミン、おそるべし…!
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各論②「セロトニン」
セロトニンも脳内で働く神経伝達物質で、睡眠に深く関わるメラトニンの前駆物質としても有名です。
セロトニンが“幸せホルモン”と呼ばれるのは、ドーパミンやノルアドレナリン(恐怖や驚きに関与)を制御して精神を安定させる作用を持っているから。その結果、情動や攻撃性のコントロール、行動における柔軟性などに影響を与えると考えられています。ほかにも生理的な機能として、体温調節や痛みのコントロールなどが重要です。
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各論③「オキシトシン」
オキシトシンは家族や心を許せる相手、ペットなどとのスキンシップのほか、リラクゼーション施術による肌の触覚刺激によっても分泌されることが分かっています。別名、“愛情ホルモン”や“抱擁ホルモン(cuddle hormone)”と呼ばれるオキシトシンもまた、脳に与える影響は複雑であることが分かり、研究者の間で新しい捉え方が広まりつつあります。
現代ではオキシトシン作動性神経は脳内や脊髄にもあり、視床下部で9個のアミノ酸から合成されたオキシトシンが神経伝達物質として鎮痛や不安の軽減、共感や他者への信頼感、摂食欲求の抑制など多岐に関わることも分かっています。また、これらは生物学的な性別に関係なく共通の機能です。さらに最近のラットを用いた研究では、脂肪を燃やすための神経路をオキシトシンが活性化するといった報告 も。
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各論④「β-エンドルフィン」
β-エンドルフィンも脳内で働く神経伝達物質の一種で、高揚や鎮痛、抗ストレス作用を担っています。その構造は31個のアミノ酸から成り、異名は脳内で自製される脳内麻薬(または「脳内モルヒネ」)です。有酸素運動によって高めの血圧が下がりやすくなったり正常化したりするのは、β-エンドルフィンが働くからと考えられています。その分泌量は、安静時に比べると運動や負荷がかかったときには約3倍から5倍に増加。このような挙動から、運動後の爽快感や精神的ストレスの解消に大きく貢献すると言われています。
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考えてダメなら動いてリフレッシュ、はこの辺りから来ているのかもしれませんね
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総論|“幸せホルモン”は単独では機能しにくい
これらの“幸せホルモン”は、どれか一つが多く分泌すればよいという訳ではなく、全体のバランスが大切です。例えば、オキシトシンは不安や恐怖などネガティブな情報を察知した際にセロトニンの分泌を促し、うつ症状を緩和させるように働きます。一方では、脳で痛みを察知するとオキシトシンがβ-エンドルフィンの分泌を促し、結果的に痛みを抑えるというような作用も。
それぞれの“幸せホルモン”がきちんと分泌され、さらに相関し合って効果的に働くように、バランスのよい食事や自律神経を整えるような生活習慣を心がけましょう。とった栄養素がきちんと吸収できるように、腸内環境を整えることもお忘れなく。
また、人やペットとのスキンシップに限らず、柔らかい素材のアイテムや程よく負荷のかかる運動も効果的です。加えて、ドーパミンを効率よく分泌させるような目標設定なども考えながら、幸せな日常生活を創造していきましょう。
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