なるべく気楽に気楽に~!

紫音-sioto

精神的な疾患を持ってる私の気楽に気楽に生きたい願望です~!
ちょこちょこ愚痴も入りますが、嫌な思いをされる方がいたらすみません><

深淵の中の蝶

自作小説

第十四章

…俺、なんで由佳里さんを抱き締めちまったのかな…一人になった俺はぼんやりと考えに耽りながら、煙草へと手が伸びる。恋人の写真の前に座り、彼女の美しい笑顔を見つめながら、煙を吐き出す。「お前の香りが、由佳里さんからして…」言い訳になりそうだな、と思い言葉を紡ぐのを止めてしまった。「…ごめんな?」只、それだけを恋人へと告げ、俺は風呂へと入る事にした。風呂で温まっていく身体に、…そう言えば由佳里さんの身体、冷たかったな…と思い出していた。卑しい気持ちは微塵もなかったのは本当だ。只、何故か抱き締めてしまった。俺…今日由佳里さんに泣き顔も見られちまったな…どうして由佳里さんはあんなに優しかったんだろう…俺の涙も拭ってくれた…優しい手の感触だったな…そんな事を思い出しながら、心も身体も温まって行く様に感じた。
由佳里さんの小さな手の感触がまだ残っている、俺は由佳里さんの触れた頬に手を当て、「手ぇ、冷たかったな…」そんな事を呟きながら目を閉じる。
由佳里さんはすげー不思議な人だ…そんな事も考えながら、風呂から上がることにした。…もう、流石に寝てるよな…なんて事を思いながら、髪を乾かしていた。時刻は3時を廻っていた。…由佳里さん…今頃なにしてんだろ…考える事は由佳里さんだけの事にふと我に返り、俺…由佳里さんの事ばっか考えてんじゃねーか…?と自分の思考に驚いていた。髪を乾かし終えた俺は恋人の写真の前へと座る。…お前とは全然違うタイプの人なんだよな…あんまり笑ったりもしねーし、…でも何かお前ともどっか似てる気がするんだよな…言葉にはせず、心の中でだけ呟く。今の俺の癒し的な…存在…?いや、察する力に長けてる、存在…?分かんねーな…そんな事を頭の中で呟き続けた。俺…由佳里さんに甘えてる…?確かな事は、由佳里さんの「存在が有難い」という事だけは分かっていた。
考える事に疲れを感じた俺は、「お前の事、愛してるぜ、いつまでもな…」と恋人へと言葉にして発した。いつの間にか消えてしまった煙草に気が付かない程、考えていた様だった。…考えても分かんねーな…と一人になった空間に、また煙草に火を点け、吸う事にした。…明日は鍋か、由佳里さん…温まってくれると良いんだけどな…。…あ、また考えちまってるじゃねーか…なんでなんだろ…。それが好意を抱き始めている事に後々気付くのには大分時間の掛かる事だったのを今でもハッキリと憶えている…。俺は、煙草を思う存分吸った後、ベッドへと向かい、泥の様に眠りについた。時刻は恐らく朝の7時になっていた頃だった。