ヘルメス

ヘルメス

昔、昔ギリシャにゼウスという神がいました。
その末っ子の名前はヘルメス!
その800代目の子孫が僕ちゃん!
決して嘘八百ではありません。
自由気ままな僕は泥棒や山賊の守り神

曇った文明の一部屋

日記




僕の手が伸びていって

見たことのない星をそっと捕まえた

すると手は緩やかな灰色の坂になり

ぼんやりとした義務感に強いられて

僕はその坂を上りはじめた

 

坂の中ごろで降りてくるあなたに出会った

坂の上に何かあるのかと訊くと

一言あなたは「夢」と言って静かに微笑んだ

不安のない笑みを僕は初めて見たような気がする

嬉しくて長い坂を降りていくあなたの後を

何通もの手紙に追いかけさせたが

途中ですべて見えなくなってしまった

あなたはそんなことも知らず

霧でかすむ地平線に姿を消した

僕は狂うように叫んだが

空間の広がりの中にその声は吸い込まれていった

しかし、その叫びの影が赤々と

僕の行程を照らし出す

突然 僕はその明るさに目がくらみ

まっさかさまに堕ちていった

 

坂から遠ざかるにつれて

「夢」というあなたの一言が心の中に広がっていく

僕が落下する速さに慣れたころ

世界ははっとするような

曇った文明の一部屋に変貌を遂げていた



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