ヘルメス

ヘルメス

昔、昔ギリシャにゼウスという神がいました。
その末っ子の名前はヘルメス!
その800代目の子孫が僕ちゃん!
決して嘘八百ではありません。
自由気ままな僕は泥棒や山賊の守り神

小説/詩


自分自身にさえ打ち明けられないことを
誰にうちあけようとしているのか
自分自身を割ることのできぬ鏡は
誰かに壊されることを夢見る
しかし誰も鏡を割りに来てくれない
映った自分の姿を見ては去っていく

鏡に過去はない
いつも今だけを映している
だが誰も見ていない時の鏡に
何が映っているかを見た者はいない


鏡に恋人を与えよう
お互いに見詰め合うがいい
相手を自分の中に容れて
空洞の反復が永遠のかなたへ続いていく
その中に何かを置き忘れたくなるので
子どもが産まれてくる

鏡が割れると破片の数だけ空ができる
つながっていない別々の空には
同じ数の太陽や月さえも
太陽神アポロンと
月の女神アルテミスが
いま美しい弓を引き絞って
巨大な鏡の前に立っている







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