ヘルメス

ヘルメス

昔、昔ギリシャにゼウスという神がいました。
その末っ子の名前はヘルメス!
その800代目の子孫が僕ちゃん!
決して嘘八百ではありません。
自由気ままな僕は泥棒や山賊の守り神

小説/詩






『この黄色いのは?』

『総武線、地下鉄じゃないけど、これに乗ると海へ行けるんだ!』

『わぁー 太平洋ね!』

カラフルな地下鉄の案内図を見ながら君は興奮していた。

『地下鉄の地図ってとてもきれい!

たくさんの色を使って次々に乗りかえていくうちに

迷子になってしまいそう!』


虹からはぐれた色の帯

整頓された机の上が

アスファルトの街だとしたら

地下鉄は長い引き出しのようなもの

乱暴な手つきでしまわれると

中のものはゴチャゴチャになってしまう


つないだ手がなだれ込んで来た人たちで引き裂かれた

『あっ! 押さないで!』


みんな景色も無いのに暗い窓の外を見ているのはなぜ?

目を背け合ったまま虚ろな表情をしているのはなぜ?

小刻みに震える手で何かを耐えているのはなぜ?


あれほど楽しみにしていたのに

現実の地下鉄は色も無く

君は泣きべそだった

どこまでも続く空洞の中をめぐるのは

数え切れない足音の群れと

手から垂れ下がったカバンの波


無表情の人々は

危険で美しい虹に閉じ込められているのも知らず

運ばれていく







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