まどろみ

涙の遺伝子

日記

涙は、血に刻まれた記憶の雫。
祖母の声の震えが沈み、
父の呑み込んだ叫びが眠り、
それらが夜ごとに水脈のように滲み出す。

しずくは、静かに頬を滑る。
それは過去を解き放ち、
まだ生まれぬ者のまぶたを
湿らせる。

この水は、痛みだけでできてはいない。
孤独に芽吹く草のように、
どんな荒れ地にも忍び込み、
胸の奥で音もなく
を張る。

わたしが泣くとき、
その涙は一人のものではなく、
受け渡されてきた証として、
とともに流れ続ける。


#日記広場:日記