まどろみ

仏門のHallowe'en

日記

境内に、南瓜の顔が並んでいる。
笑っているのか、怒っているのか、
その曖昧さが、どこか仏像に似ている。
子どもたちは、死者の仮面をかぶってやってくる。
ゾンビ、魔女、骸骨。
けれど、彼らの目は生きていて、
むしろこちらの方が、少しだけ死に近い気がする。

住職は、托鉢の鉢に飴を入れている。
「これは布施ですか?」と聞くと、
「いや、煩悩です」と笑った。
甘さは、欲望のかたちをしている。
けれど、それを否定しないのが仏教の優しさだ。

ハロウィンは、
死を遊びに変える装置だ。
仏門は、死を日常に溶かす場所だ。
その二つが交わるとき、
世界は少しだけ、
軽くなる。

本堂の奥で、蝋燭が揺れている。
風もないのに、炎が揺れるのは、
誰かが通った証かもしれない。
あるいは、
私の中の「死」が、
少しだけ目を覚ましたのかもしれない。


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