ピラティスについて②
「ピラティスの基本原則と呼吸法」
ピラティスを実践する上で非常に重要となるのが、その基本原則と独特の呼吸法です。これらを理解し、意識して行うことで、ピラティスの効果を最大限に引き出すことができます。
*ピラティスにおける8つの原則
ジョセフ・H・ピラティス氏が提唱した「コントロロジー」には、心と体を操るための基本原則が込められています。ソースでは、以下の8つの原則が挙げられています。
・コンセントレーション(集中): 常に呼吸と身体に意識を集中させ、正しい動きを行います。
・コントロール(制御): 反射的な動きではなく、一つ一つの動きを丁寧にコントロールします。
・センタリング(中心): すべての動きは、体幹という安定した中心から生み出されます。
・ブレス(呼吸): すべての動きは呼吸と連動して行います。
・フロー(動きの流れ): 反動を使わず、優雅に流れるような動きを一定のスピードで行います。
・プリシジョン(正確性): 動作を深く理解し、細部まで正確に行います。
・リラクゼーション(弛緩): 必要最低限の筋肉だけを使い、無駄な緊張をなくします。
・スタミナ(持久力): 体幹や手足の筋持久力を高めます。
これらの原則を意識することで、ピラティスの理解が深まり、より効果的なエクササイズが可能になります。
*胸式ラテラル呼吸とは?
ピラティスでは、「胸式呼吸(胸式ラテラル呼吸)」を用います。これは、肋骨を前、横、後ろの全方向に広げるように息を吸い、肋骨を閉じるように息を吐く呼吸法です。鼻から息を吸い、口からゆっくりと、吸うときの倍くらいの時間をかけて吐き出すのが基本です。息を吸うときも吐くときも、お腹は引き締めたまま行うことで、体幹の安定に繋がります。
この胸式呼吸は、交感神経を優位に働かせ、心身を活性化させる効果があるといわれています。頭や体をすっきりとさせ、集中力を高めることにも繋がります。また、深い胸式呼吸によって、体幹のインナーマッスル(横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋)が活性化されやすくなります。ピラティスのエクササイズでは、この呼吸と体の動きを連動させることが非常に重要視されています。
「ピラティスの効果とメリット」
ピラティスを継続して行うことで、心身に様々なポジティブな効果が得られます。その主な効果・メリットを見ていきましょう。
*インナーマッスルの強化
ピラティスのエクササイズの多くは、体幹(コア)とその深部にあるインナーマッスルに焦点を当てています。体幹とは、頭部と手足を除いた全ての部位を指し、首や肩周りも含まれます。アウターマッスルが体の表層にあり、大きな力を発揮するのに対し、インナーマッスルは体の深部にあり、姿勢の維持や関節の安定に重要な役割を果たします。
特にピラティスで重要視されるインナーマッスルは、「インナーユニット」や「パワーハウス」と呼ばれる、横隔膜、腹横筋、多裂筋、骨盤底筋の4つの筋肉群です。これらの筋肉は連携して働くことで、腹腔内圧を高め、天然のコルセットのように体幹を安定させます。タレ筋は背骨に直接付着し、背骨を安定させます。腹横筋は体幹の壁として重要で、人間のどの動作よりも最初に収縮してほしい筋肉です。骨盤底筋は骨盤の下部にあり、特に女性にとっては重要です。
これらのインナーマッスルを鍛えることは、体全体の安定性、正しい動きの習得、そして怪我の予防に不可欠です。
*姿勢改善と体の歪み修正
ピラティスは、インナーマッスル、特に体幹を強化することで、姿勢の改善に高い効果を発揮します。インナーマッスルが背骨や骨盤、関節を正しい位置に導き、安定させることで、無理なく美しい姿勢を維持できるようになります。猫背や反り腰といった悪姿勢の改善が期待でき、見た目のボディラインも整います。体の歪みが改善されると、日常生活での動きがスムーズになり、血行促進などの二次的な効果も期待できます。
*肩こり・腰痛の緩和
姿勢の悪さからくる身体の不調として多いのが、腰痛や肩こりです。ピラティスで体幹が安定し、姿勢が改善されると、背骨の並び(アライメント)が整い、特定の部位への負担が軽減されます。また、背中や首周りの筋肉のストレッチや血行促進により、腰痛や肩こりの改善に繋がります。信頼性の高い研究(メタアナリシス)では、ピラティスが腰痛軽減に非常に効果的であることが示されています。肩甲骨や股関節の可動域が正常化することも、これらの症状緩和に貢献します。
*怪我予防とリハビリへの活用
ピラティスはもともとリハビリテーションとして考案されたメソッドであり、怪我の予防やリハビリに適しています。体幹の安定性や全身のバランス感覚が向上することで、日常生活やスポーツにおける怪我のリスクを低減できます。例えば、東海大学ラグビー部では、ピラティスを取り入れたことで選手の怪我の件数が大幅に減少したというデータがあります。足首の捻挫など、体幹の不安定さが原因で起こりやすい怪我の予防にも繋がります。マシンピラティスは、動きをサポートする機能があるため、リハビリ中の筋力回復や機能改善にも活用されています。医療現場でも理学療法士などがピラティスをリハビリに取り入れています。
*柔軟性の向上
ピラティスのエクササイズにはストレッチの要素が多く含まれており、柔軟性の向上に効果的です。インナーマッスルを鍛えながら筋肉を伸ばすことで、しなやかで柔軟な体を作り上げることができます。また、呼吸法が全身への酸素供給を促し、筋肉の動きを活発にすることで、柔軟性の向上をサポートします。関節の可動域が広がることで、体の動きがスムーズになり、怪我の予防にも繋がります。
*バランス感覚と体幹の安定性向上
ピラティスは体幹だけでなく、全身の筋肉をバランスよく鍛えることを目指します。特定の筋肉に偏らずに全身を鍛えることで、左右の筋力バランスが整いやすくなります。また、常に体のバランスを意識しながら動くため、バランス感覚と体の安定性が向上します。これにより、日常生活やスポーツでのより効率的でバランスの取れた動きが可能になります。
*メンタルヘルスとマインドフルネス
ピラティスは「動く瞑想」とも呼ばれ、メンタル面にも大きな効果をもたらします。特徴的な呼吸法と、自分の体への集中(マインドフルネス)は、自律神経に働きかけ、心身のリラクゼーションを促進します。エクササイズ中に体の微細な動きに意識を集中することで、「今、ここ」に集中するマインドフルな状態が生まれます。これにより、ストレスや不安が軽減され、精神的な安定に繋がります。脳の活性化や、精神安定に関わるセロトニンなどのホルモンの分泌促進効果も期待できます。レッスン後の爽快感や高揚感は、交感神経への働きかけによるものです。