眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

遠い昔の思い出で

日記


  モンパルナスの審判
琥珀色の液体が グラスの底で揺れている。
向かいの席には 誰もいない。
だが 使い古されたタイプライターの残響と
強い煙草の匂いが そこには確かに居座っていた。
「書くことは 死ぬことだ」
そんな幻聴が 冬の隙間風に混じって届く。
俺は 何も答えず ただ酒を喉に流し込んだ。
火を吹くような熱さが 胃の腑で静かに暴れる。
窓の外では 雪がパリを窒息させようとしていた。
かつて ここで夢を見た若者たちの
血とインクの跡は もうどこにも見当たらない。
あるのは 磨き上げられた真鍮の鈍い光だけだ。
俺は 手帳を閉じ 鉛筆を折った。
本当のことを 一行だけ書ければいい。
それ以外はすべて ドブ川に捨てるべき虚飾だ。
店を出る時、給仕が「ムッシュ」と声をかけた。
俺は チップを多めに置き 夜の冷気へ踏み出す。
背後で ル・ドームの重い扉が 
歴史を閉じ込めるように 静かに閉まった。


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