昭和終焉、赤煉瓦の断末魔
昭和六十三年。冬の湿った風が、
ひび割れた赤レンガの隙間を吹き抜ける。
あいつはいつも、高い窓から地上げ屋の黒い車
を眺めていた。
ひび割れた赤レンガの隙間を吹き抜ける。
あいつはいつも、高い窓から地上げ屋の黒い車
を眺めていた。
「あの光に、俺たちの居場所はない」
あいつの呟きは、遠くで鳴る工事の音に掻き消された。
窓の外には、建設途中の高層ビルの群れ。
明日を急ぐクレーンの腕が、
時代遅れのこの檻を、虎視眈々と狙っている。
あいつの呟きは、遠くで鳴る工事の音に掻き消された。
窓の外には、建設途中の高層ビルの群れ。
明日を急ぐクレーンの腕が、
時代遅れのこの檻を、虎視眈々と狙っている。
かつて焼跡から立ち上がった壁も、
今やスプレーの落書きと、湿ったカビに侵食され、
一万札を振り回す街の熱気から、見捨てられていた。
今やスプレーの落書きと、湿ったカビに侵食され、
一万札を振り回す街の熱気から、見捨てられていた。
やがて元号が変わり、
重機が赤レンガの心臓を一気に貫いた。
歴史という名の、無機質なスクラップ。
重機が赤レンガの心臓を一気に貫いた。
歴史という名の、無機質なスクラップ。
今、その跡地はコインパーキングになり、
誰もが昭和という病を忘れた顔で、アクセルを踏む。
だが俺のポケットには、今も
あの日拾った、煤けた煉瓦の破片が
冷たい鉛のように沈んでいる_
誰もが昭和という病を忘れた顔で、アクセルを踏む。
だが俺のポケットには、今も
あの日拾った、煤けた煉瓦の破片が
冷たい鉛のように沈んでいる_