眠りの森 〜言葉の雫〜

ようこそ。ここは、胸の奥に深く沈んだ悲しみや、消えない寂しさを、一滴の水滴のようにそっと救い上げる場所です。木々が深い影を落とす静寂の森。そこは、誰にも見せられない孤独な涙や、言葉にならなかった切ない想いが静かに息づく世界です。独りきりで佇む夜、心に溢れる冷たい雫を、壊れやすいガラス細工のように大切に綴ります。果てしない寂しさに寄り添い、あなたの孤独の影をそっと包み込めますように。静かな痛みを分かち合う、終わらない夜の記録です。

最後の一夜、崩落の前夜

人生

昭和が終わる。
テレビの中では、誰かが崩御のニュースを繰り返していた。
だが、この赤レンガの檻に流れる時間は、
ひび割れた壁から漏れ出す、冷たい風の音だけだ。
あいつは、いつも高い窓から
遠くて瞬く湾岸のクレーンを眺めていた。
「明日になれば、ここも砂利の山だ」
火をつけた安煙草の煙が、闇を白く汚していく。
俺たちは最後の毛布を分け合い、
重機が明日、どこからこの喉元を噛み砕くかを話し合った。
「思い出なんて、一万札にもなりゃしない」
そう吐き捨てたあいつの瞳は、
かつての焼跡の少年たちと同じ、飢えた光を宿していた。
明ければ平成。
新しく塗り固められる地図に、俺たちの居場所はない。
あいつは、窓から夜の闇へ、
錆びた鍵を思い切り投げ捨てた。
「行こうぜ。レンガが崩れる前に」
翌朝、俺たちは別々の道を選んだ。
背後で、かつての聖域が、瓦礫の山へと変わる音を聞きながら。
昭和という名の重い鉄扉が、音もなく閉ざされた夜だった。


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