最後の一夜、崩落の前夜
昭和が終わる。
テレビの中では、誰かが崩御のニュースを繰り返していた。
だが、この赤レンガの檻に流れる時間は、
ひび割れた壁から漏れ出す、冷たい風の音だけだ。
テレビの中では、誰かが崩御のニュースを繰り返していた。
だが、この赤レンガの檻に流れる時間は、
ひび割れた壁から漏れ出す、冷たい風の音だけだ。
あいつは、いつも高い窓から
遠くて瞬く湾岸のクレーンを眺めていた。
「明日になれば、ここも砂利の山だ」
火をつけた安煙草の煙が、闇を白く汚していく。
遠くて瞬く湾岸のクレーンを眺めていた。
「明日になれば、ここも砂利の山だ」
火をつけた安煙草の煙が、闇を白く汚していく。
俺たちは最後の毛布を分け合い、
重機が明日、どこからこの喉元を噛み砕くかを話し合った。
「思い出なんて、一万札にもなりゃしない」
そう吐き捨てたあいつの瞳は、
かつての焼跡の少年たちと同じ、飢えた光を宿していた。
重機が明日、どこからこの喉元を噛み砕くかを話し合った。
「思い出なんて、一万札にもなりゃしない」
そう吐き捨てたあいつの瞳は、
かつての焼跡の少年たちと同じ、飢えた光を宿していた。
明ければ平成。
新しく塗り固められる地図に、俺たちの居場所はない。
あいつは、窓から夜の闇へ、
錆びた鍵を思い切り投げ捨てた。
新しく塗り固められる地図に、俺たちの居場所はない。
あいつは、窓から夜の闇へ、
錆びた鍵を思い切り投げ捨てた。
「行こうぜ。レンガが崩れる前に」
翌朝、俺たちは別々の道を選んだ。
背後で、かつての聖域が、瓦礫の山へと変わる音を聞きながら。
昭和という名の重い鉄扉が、音もなく閉ざされた夜だった。
背後で、かつての聖域が、瓦礫の山へと変わる音を聞きながら。
昭和という名の重い鉄扉が、音もなく閉ざされた夜だった。