煙の向こう側
煙突から吐き出された灰色の煙が、
冬の鉛色の空に溶けていく。
あいつの最後のエールだ。
案外、さっぱりしたもんだ。
冬の鉛色の空に溶けていく。
あいつの最後のエールだ。
案外、さっぱりしたもんだ。
待合室の自動販売機、
冷たいコーヒーの缶を握りしめる。
熱いのは炉の中だけで十分だ。
冷たいコーヒーの缶を握りしめる。
熱いのは炉の中だけで十分だ。
焼却炉(ハコ)の中の熱気は、
あいつの背負っていた因縁も、
俺の薄汚れた過去も、
1200度の炎で、白紙に戻す。
あいつの背負っていた因縁も、
俺の薄汚れた過去も、
1200度の炎で、白紙に戻す。
骨上げの骨壷(シマ)は、思ったより軽い。
「喉仏が綺麗に残りました」
職員が無機質な声で呟く。
「喉仏が綺麗に残りました」
職員が無機質な声で呟く。
あいつは死んで骨になり、
俺は生きて、また街へ戻る。
別れに言葉はいらねえ。
煙が晴れたら、すぐに別の煙が上がってきやがる。
俺は生きて、また街へ戻る。
別れに言葉はいらねえ。
煙が晴れたら、すぐに別の煙が上がってきやがる。
冷え切った缶コーヒーをゴミ箱に投げ入れ、
俺は襟を立てて、
骨壺を抱えた遺族に背を向けた_
俺は襟を立てて、
骨壺を抱えた遺族に背を向けた_
モノローグ、灰色の
「人生は短い、そう言う奴に限って、死ぬまでダラダラと恨みを抱えて生きる。
あいつは違った。最後は綺麗に燃え尽きた。
俺? 俺はまだ、この薄汚い街で、煙を吸いながらタバコを吹かすのさ。
骨になったあいつに、明日なんて来ない。
俺には、明日なんて来なくてもいい。
……火葬場の煙は、いつ見ても冷徹だ。それがいい_
あいつは違った。最後は綺麗に燃え尽きた。
俺? 俺はまだ、この薄汚い街で、煙を吸いながらタバコを吹かすのさ。
骨になったあいつに、明日なんて来ない。
俺には、明日なんて来なくてもいい。
……火葬場の煙は、いつ見ても冷徹だ。それがいい_