三月の晩餐

日記

夜の帳が下りる。
この街の喧騒が、遠い潮騒のように遠のいていく_

並べられたのは、冷えたダイナーのステーキと、
ラベルの剥がれた安物のウィスキー。
贅沢を言う時間は、疾うの昔に使い果たした。
向かいの席には、影だけが座っている。
裏切った友か、あるいは、かつて愛した女の幻か。
誰も答えず、ただ換気扇が乾いた音で回る。
最後の一口を飲み干し、
俺はテーブルにチップを置いた。
命の値段にしちゃ、少しばかり多すぎたかもしれない。 
重いドアを押し開ければ、
そこには冷たい深淵と、輝く月が待っている_


#日記広場:日記

  • 眠

    2026/03/12 11:47:09

    > Amanekoさん
    恐れ入ります、見ず知らずの私に声をかけていただいて。
    この街は、誰もが自分の影を追いかけるのに忙しく
    隣人の顔すら忘れてしまう場所だと思っておりました。
    私のような男と知り合うのは、
    深夜の雨に傘を貸すような、少しばかり無意味な親切かもしれません。
    ですが、そのお心遣いには
    最高のヴィンテージ・ワインを贈る以上の敬意を表しましょう_

  • Amaneko

    Amaneko

    2026/03/11 21:37:08

    夜の静けさの中に、どこか切ない余韻が残る文章ですね。
    向かいの席に残された影の描写がとても印象的でした。

    人を深く想った時間というのは、夜の景色の中でふとよみがえることがありますよね。
    そんなことを少し思いながら読ませていただきました。

    最後に描かれた月の光も、とても綺麗でした。
    月というものは、いろいろな記憶を静かに照らしますね。

    わたしにも忘れることができない月があります。