春嵐(スプリング・ストーム)

日記

ネオンが雨に溶ける夜だ。
安物のバーボンの匂いと、春の湿った風が混ざり合う。
この時期の風は、冬の死骸と夏の熱狂をかき混ぜる。
街は、正気を失ったように揺れている。
トレンチコートの襟を立て、俺はタバコに火をつけた。
マッチの炎が、一瞬だけ孤独を照らす。
昨日の約束なんて、風に吹き飛ばされてどこかへ消えた。
情けをかけるな、期待するな。
それは、都会で生き残るための最低限のルールだ。
窓ガラスを叩きつける雨は、
俺の過去を洗い流そうとしているのか、
それとも、さらに汚そうとしているのか。
明日になれば、この嵐も嘘のように晴れるだろう。
新しい花が咲き、死んだ男のことは誰も覚えていない。
それでいい。
春の嵐は、そうやって世界を更新していく。
俺は最後の一口を飲み干し、嵐の中へと歩き出した。
冷たい雨が、俺の顔を冷たく打った_


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