春の嵐

日記

ガチャン、と受話器を戻す。
鉄の感触が指先に残り、世界は再び雨の音に支配された。
一歩外へ踏み出せば、春の嵐が容赦なくコートを叩く。
それは優しさなど微塵もない、すべてをなぎ倒そうとする暴力的な風だ。
ポケットの中で、沈黙したままのスマホが揺れる。
さっきまで繋がっていた受話器の温もりとは対照的な、冷徹な塊。
俺はそれを迷わず、路地裏のゴミ箱へと滑り込ませた。
未練を捨てるには、これ以上ないほど荒れた夜だ。
吹き付ける風が、街に溜まった冬の残骸をさらっていく。
散り急ぐ花びらが、雨に混じってアスファルトを白く汚していた。
俺は襟を立て、風の吹いてくる方角へと顔を向ける。
行く先が決まっているわけじゃない。
だが、誰にも繋がらない自由だけは、この嵐が運んできてくれた。
濡れた靴音を響かせ、俺は闇に溶け込んでいく。
明日の朝、嵐が去った後の街に、俺の足跡はひとつも残っていないだろう_


#日記広場:日記

  • みき

    みき

    2026/03/14 11:16:38

    有名なベートーヴェンの交響曲第5番ハ短調作品67。
    日本では「運命」と呼ばれていますけれど、もちろんこれもベートーヴェンが命名したわけではなくて、「運命」と呼んでいるのは日本国内だけのようです。
    これは、ベートーヴェンが第1楽章冒頭の、あの有名なモティーフを「運命はかくの如く扉を叩く」と言ったことからつけられたみたいです。

  • 眠

    2026/03/14 10:40:59

    > みきさん
    一発のアルペジオが、静寂の眉間を静かに撃ち抜きました。
    運命というものは、いつも予告なしにドアを蹴り破って現れるものです。
    「シェイクスピアをお読みなさい」と、あの方は言いました。
    ですが、皮肉なものですね。
    この激しい耳鳴りの中に、魔法の杖を振る老人の居場所などはございません。
    ここにあるのは、指先から溢れ出すニ短調の血潮と、
    湿りきった煙草の煙、それだけなのです。
    第一楽章。
    問いかけは低く、答えはあまりに速く過ぎ去ります。
    逃げ場を失い震える和音を、私はただペダルで踏み潰すのです。
    嵐(テンペスト)を呼んだのは誰だったのでしょうか。
    私自身か、あるいは鏡の中に潜む絶望だったのか。
    第三楽章。
    馬を走らせましょう。心臓の鼓動が十六分音符を刻み始めます。
    一度きりの人生、ブレーキなどという代物は、最初から持ち合わせてはおりません。
    繰り返される無機質なロンド。
    それは、終わりのない夜の街を彷徨う男の、孤独な足音に似ています。
    最後の一音が消え去った後。
    そこに残ったのは、わずかなの匂いと、
    震える拳が握りしめた、空っぽの静寂だけでした_     ありがとう
     

  • みき

    みき

    2026/03/14 10:10:41

    おはようございます♥
    寒の戻りでしょうか、今日も寒いです。ま、暖房を使うほどではありませんけれど。

    シューベルトのピアノ連弾曲に「人生の嵐」と名付けられた曲があったと思います。
    ただ、この曲名はシューベルト自身が付けたものではないようです。
    ベートーヴェンのピアノソナタにも「テンペスト(嵐、暴風雨)」があります。
    ただこれも、ベートーヴェン自身が付けたわけではなくて、弟子のシントラーが「先生、この曲を理解するにはどうしたらいいでしょうか?」とベートーヴェンに訊いたところ、「シェイクスピアの『テンペスト』を読んだらよい。」と答えたという逸話から後世に付けられたもののようです。

    抽象的な「嵐」を言葉で表すか、音(音楽)で表すか、人は様々な表現方法を持っているのですね。

    さて、今日はお休みです。
    新しい生活サイクルにも、やっと慣れてきました。
    実は通勤経路も、今まで使っていた私鉄からJRに変わって、お家からの駅の方向も逆になりました。
    中学、高校の時の通学経路なので、ある意味、慣れ親しんだ道なのですけれど。
    ということは、顔なじみだったお総菜屋さんやカフェ、お友達のネコちゃんとも会う機会がなくなっちゃったわけで・・・。
    ネコのミケちゃん、元気にしてるかしら?
    たまにお休みの日の午後とかに、お散歩で行ってみたいと思います。

    体調も今のところ大丈夫で、めまいは出ていません。
    左耳難聴は、一生おつきあいしていくしかなさそうで、これはもう仕方ないかな、って思ってます。
    (電話は右耳で聞くしかなくて、これが不便・・・。)
    やっぱり、過労、睡眠不足、不規則な生活習慣がいけないんですね。
    今の職場の薬局長も、面接のときに正直にお話したので、気を遣ってくださいます。
    ありがたいことです。

    ということで、3月後半もよろしくお願いいたします。
    職場最寄り駅の駅ビルでは、五月人形の販売準備してました・・・。(^^;)